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海運3社の業績見通し…売上高は全社上方修正も、利益面で差が出た要因
海運大手3社は2024年3月期業績見通しの売上高をそろって上方修正した。上期に苦戦していたドライバルク市況の持ち直しに加え、中東情勢の悪化に伴いコンテナ船などの船腹需要が増加しているため。前期比ではコロナ禍で高騰していたコンテナ船市況の下落で全社が大幅経常減益を見込む。
日本郵船は5日、24年3月期業績見通しの経常利益を前回見通し比100億円増の2450億円に上方修正した。売上高は同600億円増、営業利益は同100億円増に上方修正した。当期利益は日本貨物航空(NCA)の株式譲渡日の24年4月へのずれ込みなどで同200億円減に下方修正した。
24年3月期の売上高予想は3社とも上方修正したが、利益面は一過性の要因などで差が出た。商船三井は24年3月期の各段階利益を上方修正し、川崎汽船は営業利益を下方修正、経常、当期利益予想を据え置いた。各社ともに自動車船やエネルギー輸送事業は堅調だが、川崎汽船はドライバルクの利益下振れが響いた。
中東情勢の悪化に伴い各社は遠回りな喜望峰経由の輸送へ切り替えている。この影響として24年3月期は燃料費などのコスト増加が先行しており、運賃への転嫁は25年3月期以降に本格化する。
海外船舶においてもスエズ運河通航の取りやめが広がっている。足元では「スエズ運河を通航する船舶の総数は(中東情勢悪化前の)4割減になっている」(川崎汽船)という。パナマ運河も渇水により通航隻数を制限しており、運航コストや船腹需給、市況への影響がどこまで大きくなるか注目される。
同日でそろった海運3社の23年4―12月期連結決算は、全社が減収大幅経常減益となった。コンテナ船の減益が大きかった。
日刊工業新聞 2024年02月06日
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2023年4-12月期決算の発表が始まりました。業界別にそれぞれの動向を紹介します。