日本郵船は3倍超100隻以上に、船舶で衛星通信「スターリンク」の導入が広がる理由
日本郵船は2024年度内に、米スペースXの低軌道衛星通信サービス「スターリンク」を導入する外航船を現在の3倍超となる100隻以上に拡大する。船員が気軽に通話できるようにして生活の質を高め、船員の確保につなげる。また船と陸との間の情報共有や遠隔医療支援にも役立てる。商船三井も23年度中に140隻に導入する計画で、海運業界の人手不足対策として導入が広がっている。
日本郵船は22年12月にスターリンクの試験導入を始めた。特に若い船員は、スマートフォンなどで「常に誰かとつながっていたい」というニーズが強く、通信環境は生活する上で重要な要素になっている。試験導入の結果、スターリンクは通信速度を大幅に改善でき、家族や友人らとのビデオ通話を気軽に行えるようになった。また船と陸との間の情報共有や会議、トラブル発生時や遠隔医療時の陸からの支援にも役立てられる。
船員からの評判も良かったため、導入隻数を増やす。今後、自社グループの船員が乗船する船のうち200隻超を対象に導入を推進。現在の約30隻から拡大し、24年度には100隻超への設置が完了する見込みという。
高軌道衛星を使う従来の船陸間通信は、船上での通信速度が遅くなるという課題があった。スターリンクは低軌道衛星を使うため、高速で低額の大容量通信が可能となる。このため多くの企業で導入が広がっている。
同社は将来の船員数の拡大に向け、大学での人材育成や、船員の処遇・生活環境の改善、自動運航技術などを利用した作業負荷の軽減などに多面的に取り組む。
日刊工業新聞 2023年12月26日