溶融塩でCO2電気分解…炭抽出→燃料源に、同志社大が提案する先端技術の中身
同志社大学の後藤琢也教授は、溶融塩を電解質にした電気分解により二酸化炭素(CO2)から炭を取り出し、これをエネルギー源として活用することを提案している。この技術は炭以外の物質を取り出すことも可能。ダイキン工業との取り組みのなかでカーバイドの合成にもこのほど成功した。こうした研究成果をもとに、CO2の有効活用によるカーボンネガティブにつなげる考えだ。
酸素発生用陽極と金属陰極で構成する電解装置によりCO2を電気分解して生成した炭は、通常の石炭と同様のエネルギーを持つ。見た目も通常の石炭と変わらないため、既存設備で活用ができる。また、「固体でためておくのは良いオプションになりうる」(後藤教授)利点もある。カーボンニュートラルの方策として話題に挙がるCO2の回収・利用・貯留(CCS)は、海底にCO2を埋設するもの。CO2の海中流出の懸念があるため、固体にすることでそのリスクを低減できると見る。
「国内では新エネルギーとして水素が注目されており、なかなか日が当たらない」と後藤教授はこぼす。だが、2023年に経済産業省がまとめた「カーボンリサイクルロードマップ」で後藤教授が代表を務める同志社大の取り組みが紹介されるなど、少しずつ認知されるようになった。後藤教授は、「一本足打法ではなく、複数の選択肢があるエネルギーミックスは重要。学生時代からそう学んできた」と話す。
さらに、炭以外の化学物質の抽出に企業とともに取り組んでいる。同志社大とダイキン工業は20年、産学連携拠点の「同志社―ダイキン『次の環境』研究センター」を同志社大京田辺キャンパス(京都府京田辺市)内に設置。研究を進め、23年に重要な成果を発表した。溶融塩にCO2を投入して電気分解することで、アセチレンの原料となるカーバイドの合成に成功したのだ。
合成する手順はまず、溶融塩を500度C以上に加熱。そこにCO2を注入し、電気分解させた。結果、陰極上にカーバイドが生成した。アセチレンは金属の溶接や切断、塩化ビニール管などの合成樹脂の原料に広く利用されている化合物。火力発電所や製鉄所など大量のCO2を排出する現場で採用を目指す。後藤教授は今後の研究の展望について、「2者で研究が進められない部分については、同志社大の産学連携組織を活用したい」と話す。
後藤教授は熱源の備蓄という点ではヒートポンプを活用したカルノーバッテリーにも関心を寄せ、この分野への参入を検討している。カルノー技術は、欧州を中心に研究開発が始まっている比較的新しい技術。各所から集めた廃熱を1カ所に集め、産業利用できる温度に加工した上で貯留したり電力供給したりする仕組みだ。カーボンネガティブの選択肢を増やすため、同志社大や企業、国立研究機関が連携して多様な検討を進めている。