CMOSトランジスタにおける計算と熱力学の関係、筑波大が解明した意義
エネ消費分析に活用
筑波大学の都倉康弘教授らの研究グループは、コンピューターが計算を実行する際の、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)NANDゲートにおける計算過程と熱力学的性質の関係を解明した。計算機の稼働時のエネルギー消費についての理解などにつながる。
日本物理学会発行の英文誌JPSJ12月号に掲載された。
都倉教授らはCMOSトランジスタの「サブスレッショルド領域」で動作するNANDゲートに焦点を当て、計算の過程とそれに伴う散逸熱を解析。その結果、計算の熱力学的性質が、ゲートへの入力電圧の違いや出力電圧のダイナミクスとどのように関連するのかを明らかにした。
コンピューターによる計算実行に伴うエネルギーコストの理解は、物理的に興味深い問題であるだけでなく、実用上も重要。得られた関係性は計算の熱力学的性質の理解を促すだけでなく、実際のコンピューターのエネルギー消費を分析する手法として使える。
従来、理想的なモデルや設定に基づく複雑なコンピューターに対する熱力学的な分析はあったが、物理的に実装されたコンピューターに対する計算過程と熱力学的性質の関連性を探る研究はほとんどされていなかった。
日刊工業新聞 2023年12月28日