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新NISAで証券界活況、野村証券・みずほ証券など裾野拡大へ一手

貯蓄から投資の時代へ―。2024年の幕開けとともに、新しい少額投資非課税制度(NISA)がスタートした。いつでも口座開設できるようになるなど、従来に比べて同制度が拡充して利用勝手が良くなり、個人投資家の発掘や裾野拡大が期待できそうだ。証券各社の取り組みも盛り上がっている。政府が掲げる「資産運用立国」実現につながる大きな力になるか、今後の動向が注目される。(地主豊)

年代別NISA(一般・つみたて)口座数

野村証券は新規顧客の掘り起こしだけでなく、取引先の従業員が属する企業向けに、持株会や確定拠出年金(DC)など職域サービスの提供に力を入れている。これを突破口に新たに口座を開設してもらい、NISAをはじめ、各種サービスを通じて資産運用を長期間支えていく。

投資枠の拡充を踏まえ、大和証券は「年間360万円なら利用できるという当社の顧客層は多い。投資を検討してもらえる層に提供していきたい」と、中長期も見据えた顧客獲得を狙う。NISAを「国民の権利」に位置付け、数十年かけて浸透させる構えだ。

投資の初心者を支援しようと、SMBC日興証券は初めての投資信託選びに関する情報を集約したサービスを開始した。対面営業の強化と並行して顧客との接点をオンラインで確保する試みで「(顧客とサービスとつなぎ、体験する)UIとUXを高める一つの要素になる」という。

みずほ証券は若年層や現役世代を中心に顧客基盤を持つ楽天証券や、スマートフォン専業のPayPay証券と業務提携している。「オンライン・リアル単独では対応できない多様なニーズへの適応力」を掲げ、最適な金融サービスを自ら選択できる体制を目指す。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券は三菱UFJフィナンシャル・グループとして「NISA推進室」を開設。傘下で安価な手数料体系のauカブコム証券が中核となり「グループ各社の強みを生かして連携し、顧客との接点を拡大する」。

証券口座を持つ顧客の半数以上が30代以下というSBI証券は、投資のきっかけを提供しようとユーチューブのチャンネルを21年に開設。SNSで取引の情報収集を行う若年層に照準を合わせる。

日本証券業協会のNISA口座開設・利用状況調査によると、23年9月末時点の全証券会社の総口座数は1356万件で、22年末から177万件(15%)増加した。年代別では20―50代を中心に増加傾向にあり、30代が281万件で最も多い。次いで40代、50代、20代と続く。日証協の森田敏夫会長は「今まではリスクを抑えて成果を上げる長期運用の期限に限界があった。NISAの恒久化が一因では」と分析する。

日本の証券投資人口が拡大すれば「証券業界全体のビジネス拡大にもつながる」(野村証券)。各社の取り組みが業界活性化の後押しになりそうだ。

日刊工業新聞 2023年1月9日

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