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量研機構が解明、「やる気が下がる」仕組みとは?

量研機構が解明、「やる気が下がる」仕組みとは?

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量子科学技術研究開発機構の南本敬史次長と堀由紀子研究員らは、脳内神経伝達物質であるセロトニンの不足によりやる気が下がる仕組みを解明した。セロトニンレベルが低下すると報酬を期待して意欲が生まれる効果が下がり、さらに報酬にかかわらず意欲が出ないという反応が増えることが分かった。これらに関与する2種類のセロトニン受容体も特定。うつなどの意欲障害のメカニズム解明や治療法の開発につながると期待される。

セロトニンは気分や覚醒リズムに関わり、不足すると不安や意欲低下が生じる。研究グループはサルを使い、報酬の効果を定量した上で報酬の大小と労力・時間という行動コストの大小による意欲低下レベルを測定し、受容体の役割を調べた。

報酬のジュース量を4段階にして課題を訓練。学習済みのサルは報酬量が増えると課題のエラー率は反比例的に減る。だが脳脊髄液のセロトニン濃度を薬剤で約30%低下させたサルは、どの報酬量でもエラー率が増加。報酬効果の減少と、行動コストに敏感になるコスト感受性の上昇が要因で意欲が低下することが示された。

脳内のセロトニン受容体は10種類以上あり、主要な4種について各受容体を介したセロトニン伝達を30%程度阻害して関連を分析した。その結果、報酬効果の減少は5―HT1Aと5―HT1B受容体を介したセロトニン伝達の低下で引き起こされていた。特に5―HT1A受容体の伝達阻害は、報酬を得るのに必要な労力や時間を多く見積もる作用があることが分かった。

日刊工業新聞 2024年01月05日

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