住友化学・三井化学など…新たな付加価値の源泉、「グリーンコンビナート」に挑む
2023年は石油化学コンビナートでの具体的な連携に向け、各社が一歩力強く踏み込んだ年となった。背景にある一つが、カーボンニュートラル(温室効果ガス〈GHG〉排出量実質ゼロ)の実現に向けた「グリーンコンビナート」を目指し、各社が取り組みを加速させたことだ。
2月には住友化学、三井化学、丸善石油化学の3社が、京葉臨海コンビナートにおけるカーボンニュートラルの実現に向けた連携の検討開始を公表した。原料の多様化に向け、バイオマスの活用やケミカルリサイクル(CR)、マテリアルリサイクルの技術開発などの検討を進める。
各地のコンビナートでも、さまざまな連携が広がりつつある。四日市コンビナートでは産学官による「四日市コンビナートカーボンニュートラル化推進委員会」の会議が始まったほか、22年11月に立ち上げた水島コンビナートの「カーボンニュートラルネットワーク会議」も複数回開催してきた。
「グリーンケミストリーを実現するには、コンビナートを仕立て直す必要がある」。三井化学の橋本修社長はこう指摘する。ただ数十年もの歴史が脈々と続いてきた石化コンビナートにおいて、これまで最適なパイプラインを構築してきただけに一筋縄ではいかないと言う声もある。今後もさまざまな議論が交わされそうだ。
一方で、グリーンコンビナートへの発展には新たな付加価値を生み出す源泉としての期待もある。三菱ケミカルグループは茨城県と、鹿島コンビナートの循環型コンビナート形成に向け連携。三菱ケミカル茨城事業所(茨城県神栖市)でENEOSと立ち上げるCR設備を生かし、廃プラスチックを油化してエチレンやプロピレンなどを生産する計画だ。持続可能な製品の国際認証を活用した供給を視野に入れ、素材から脱炭素化に向けた動きを広げる考えだ。
24年はよりカーボンニュートラル実現に近づくための議論や施策が活発化しそうだ。
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