化学工場に付加価値、三井化学が大阪で磨く脱炭素の今
三井化学は大阪工場(大阪府高石市)で、カーボンニュートラル(温室効果ガス〈GHG〉排出量実質ゼロ)対応やデジタル変革(DX)を推進する。エチレンとアンモニアの両プラントを持ち、二酸化炭素(CO2)排出量の削減に向けた先進的な取り組みを進めやすい環境を生かす。コンビナート間で他社と容易に連携できることも強みだ。人工知能(AI)などを活用したDXも積極化し、化学工場としての付加価値に磨きをかける。(山岸渉)
「カーボンニュートラルへの挑戦的な目標を立てているが、最初に取り組めるチャンスがあることで競争力強化につながり、(大阪工場の)プレゼンスも高まる」。三井化学の岡田一成執行役員大阪工場長はこう意気込む。
大阪工場の特徴は化学品の基礎原料となるエチレンを作るナフサクラッカーと、液化天然ガス(LNG)などを原料にアンモニアを作るプラントを備えている点だ。このためプロピレンやベンゼン、アンモニアを原料とする尿素など、手がける化学製品は幅広い。
ただエチレンのように上流の化学品を扱うだけに、CO2の排出量は多くなる。そこで、同工場では新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の採択事業をはじめとする新たな技術開発が進んでいる。
その一つが、ナフサクラッカーの燃料をメタンからクリーンアンモニアへ切り替える試みだ。足元では、2030年度までに実証炉を導入する計画が動いている。また、原料転換でも24年初にも廃プラスチック分解油のクラッカー投入を予定する。
関西圏のクラッカーが大阪工場の1基のみということも、コンビナート内で「しがらみがなく連携が取りやすい」(岡田執行役員)利点につながっている。例えば大阪ガスとの連携では、CO2を分離・回収して利活用する事業の検討に取り組んでいる。
視線の先にあるのが、大阪工場をモデルとしたカーボンニュートラル構想だ。燃料転換と原料転換、そしてCO2の分離・回収技術を組み合わせ、50年に同工場のCO2総排出量160万トンを実質ゼロにすることを目指している。
一方、DXの取り組みも目立つ。岡田執行役員は「安全性や設備の信頼性、生産性に関する点で活用していきたい」と力を込める。
現在はウエアラブルカメラを使った技術指導のほか、飛行ロボット(ドローン)を活用した高所での設備点検に取り組む。また蓄積したヒヤリハットなどに関する情報をAIで分析し、作業に応じた注意点を事前に把握できるようにするシステムも整備している。予防保全などにも力を入れていく考えだ。
同社は脱炭素に向けた施策とDXによる効率化を掛け合わせ、新たな化学工場としての存在感を高めていきたい構えだ。
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