「防衛事業」拡大期…三菱重工は売上高1兆円規模、重工大手が強気の長期見通し
重工業大手による防衛事業の拡大期突入への動きが鮮明になっている。政府の防衛予算大幅増を背景に受注が伸びており、強気の長期見通し表明が相次いだ。
三菱重工業は11月に防衛事業説明会を開き、2027年3月期までに宇宙を含む事業売上高を現状比2倍の1兆円規模に拡大する計画を公表した。防衛・宇宙セグメントの売上高はここ10年、5000億円弱で推移し、23年3月期は4749億円だった。
また川崎重工業は12月12日に開いた経営説明会で、防衛事業は31年3月期に売上高5000億―7000億円の目標を示した。23年3月期の約2400億円から大幅に伸ばす。事業利益率は25年3月期に5%以上に高め、28年3月期をめどに10%以上を目指す。
日本政府は22年12月策定の27年度までの5カ年の防衛力整備計画で、防衛力整備事業費を約43兆5000億円と23年度までの前計画の2・5倍に高めた。重工大手は早速受注として成果が出ている。
三菱重工は23年11月、24年3月期の「航空・防衛・宇宙」部門の受注見通しを従来予想比8000億円増の1兆8000億円に引き上げた。上振れの大部分は防衛だ。受注は3―4年後に売上高に計上されるため、27年3月期に売上高1兆円に達すると想定。28年3月期からの3年間は1兆円以上で推移すると見通す。
川重は24年3月期に受注高約4600億円を見込み、前期より約8割増える。
一方で、IHIは9月に開いた事業説明会で、防衛事業の長期見通しは示さなかった。主力のエンジンの売上高拡大には時間がかかると見込む。
三菱重工は長期的な重要案件も抱える。日英伊3カ国による次期戦闘機の共同開発だ。35年の引き渡しを目指しており、米国の下請けだった現行のF2戦闘機と異なり、対等な共同開発という経験を積める。IHIもエンジン開発に参画する。開発の本格化は先だが、長期的に防衛事業拡大につながる。