「いまだあしき商習慣が残る」サッシ流通店の経営基盤健全化、日本サッシ協会が新制度
メーカーと連携、新制度
サッシ業界全体の存続・発展のため、日本サッシ協会(東京都港区、吉田聡理事長=LIXIL執行役専務)は「流通会員制度」を立ち上げた。これまで主な会員企業を窓サッシやシャッターなどのメーカーとしていたのを、サッシ流通業・販売事業者まで範囲を拡大。メーカーと流通店が互いに連携し、それぞれが健全な職場環境作りや適切な経費計上、受注契約に取り組める環境を整備する。(田中薫)
流通会員は「流通幹事会員」と「流通情報会員」で構成する。幹事会員は理事会の承認を受けた企業のみ入会でき、流通店の代表企業として地域活動や会員向け資料などの企画・作成に携わる。情報会員は講習会に参加できるほか、協会作成のチラシやポスター、会報誌を受け取ることができる。流通店は全国に1万社ほどあるとみられている。幹事会員25社で立ち上げ、今後、上限100社まで増やす。情報会員は1000社を目指す。
サッシ業界では人口減少に伴い、新築依存の収益体制から脱却し、既存住宅のリフォーム需要を獲得することが求められる。だが、サッシ流通店には「いまだあしき商習慣が残る」(坂口治司専務理事)という。
ビルダーや工務店と契約書を作らずに口頭だけで受注を行っていたり、適切な値上げや経費計上が行われていなかったりする会社が多い。多数の窓が取り付けられる新築物件と異なり、リフォームの現場では1現場当たりの搬入数が少なく、断熱化のために重量も増しコストがかかる。搬入代金の別途請求や工事費の見直しなど、現在の状況に即した見積もりが必要だ。協会は契約標準化講習会の実施や契約書のひな形の提供を行うことで、流通店の経営基盤の健全化を図る。
また、製造現場と同様に施工現場でも人手不足は深刻だ。年間休日数が少ない企業が多く、仕事内容のイメージが付きにくいこともあり、応募が集まらないこともあるという。そこで、求人募集に関する講演会や職人育成のための講習会の開催、施工者の業務内容を紹介する冊子の作成などを行い、人材獲得と健全な職場環境作りを支援していく。
2023年に経済産業省・環境省・国土交通省が行った住宅窓リフォームの補助事業は、サッシ業界にとって大きな追い風となった。補正予算案では後継事業が盛り込まれ、24年も補助金の続行が予想される。納期遅延や施工の遅れが発生しないよう、メーカーと流通店にはさらなる円滑な連携が求められる。坂口専務理事は「メーカーだけが活動していても、流通部分で適切な業務がなされなければ業界は貧相になるばかりだ」と指摘する。流通会員制度の立ち上げが、業界全体の底上げに寄与することが期待される。