撤退・縮小相次ぐスマホ市場、見えてきた復調の兆しの中身
2023年は国内スマートフォン市場の低迷が鮮明になった。MM総研(東京都港区)によると、23年度上期(4―9月)のスマホの国内出荷台数は前年同期比17%減の1157万台。15年度以降の上期出荷台数として最少となった。低迷の背景にはスマホの性能向上による買い替えサイクルの長期化のほか、為替の円安や材料価格の上昇による端末価格の値上げなどがある。
需要落ち込みの影響は国内メーカーにも波及した。FCNT(旧富士通コネクテッドテクノロジーズ)を含む3社は民事再生法の適用を5月末に申請。中国レノボグループが事業を承継し、10月に事業を再開した。京セラは個人向けのスマホ事業を縮小し、法人向けにも需要がある耐久性の高いスマホなどへの集中を決定。21年に携帯端末事業に参入したバルミューダは、23年5月に同事業からの撤退を発表した。
ただ、国外を含めると復調の兆しが見える。米調査会社IDCは11月に発表した調査結果で、23年のスマホの世界出荷台数は前年比3・5%減の11億6000万台になると推測。8月公表の11億5000万台から上方修正した。
メーカー各社の新製品も市場回復を後押ししそうだ。米モトローラ・モビリティや韓国サムスン電子などが折り畳めるスマホを展開。多様な角度に折り曲げて“自撮り”に使える点などを訴求している。MM総研の横田英明取締役副所長は新しい形のスマホに関して「市場が盛り上がるきっかけになるのではないか」と話す。
日本国内では23年内に電気通信事業法の一部改正も予定されている。端末と回線をセット販売した際の値引き上限額が、現行の2万円(消費税抜き)から4万円(同)に引き上がる見通しで、市場の回復に一役買う可能性がある。加えて、第5世代通信(5G)の本格普及が「一つのパラダイムシフトになるかもしれない」(横田MM総研取締役副所長)。今後の需要回復に期待がかかる。
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