シェア3位が破綻…縮小・撤退相次ぐ携帯端末、今後も商機見いだせず?
国内携帯端末メーカーが事業の停止や縮小、撤退を表明する例が相次いでいる。近年は端末の高性能化で消費者の買い替え頻度が下がる傾向にあったことに加え、為替の円安に伴う部材の輸入コスト上昇などが追い打ちをかけた。今後の携帯端末の総出荷台数も減少が見込まれており、市場規模に対してメーカー数が多いとの指摘も出ている。海外に活路を求めることも容易ではなく、商機を見いだしにくい状況が続きそうだ。(阿部未沙子)
FCNT(旧富士通コネクテッドテクノロジーズ、神奈川県大和市)は5月30日、東京地方裁判所に民事再生手続き開始の申し立てを行い、携帯端末の製造・販売事業を停止すると表明した。MM総研(東京都港区)によると22年度の国内携帯電話端末の総出荷台数でFCNTは米アップル、シャープに続く3位。シェアは9・9%だった。一定の存在感を示してきただけに、経営破綻には驚きの声も上がった。
携帯端末事業の縮小や撤退は他社でも起きている。京セラは足元では約20機種の端末を展開しているが、機種数を絞り、法人向けにも需要がある耐久性の高いスマートフォンなどに集中する方針だ。また、21年に携帯端末事業に参入したバルミューダは、原材料価格の上昇や為替の円安進行を背景に次期モデルの開発が困難になり、撤退を決めた。22年12月期の同事業の売上高は、前期比69・5%減の約8億6800万円にとどまっていた。
MM総研によると、22年度の国内携帯電話端末の総出荷台数は前年度比12・8%減の3193万台。国内メーカーの事業縮小や撤退の表明が続いたことに関して、MM総研の横田英明取締役副所長は「自然の流れとも言える」と話す。部品を輸入する必要がある国内企業にとって、円安は逆風だ。
また、国内スマホ市場では米アップルがシェア首位を保つ一方、米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」に対応する端末の需要は日本企業と海外企業が奪い合っている。こうした状況について横田MM総研副所長は「市場規模に対してメーカー数が多い」と指摘する。
市場規模拡大への期待は薄い。MM総研の予測では27年度に国内携帯端末の総出荷台数が23年度見通し比5・2%減の2952万台になる。端末の性能が向上し、買い替え頻度が減ったことも一因。市場縮小が現実となれば「携帯端末事業から撤退せざるを得ないメーカーも(新たに)出てくるのではないか」(横田副所長)。
国内メーカーが海外に活路を求めることも容易ではない。総務省の「情報通信白書」によると、世界のスマホ市場におけるソニーのシェアは21年に16年比0・9ポイント減の0・2%だった。海外ではシャオミやオッポといった中国勢が台頭し、韓国サムスン電子などと争っている。インフレの影響などで世界スマホ市場の伸び自体も停滞しており、メーカーは勝ち筋を見いだしにくい状況が続きそうだ。