米アップルの「iPhone15」、成熟のスマホ市場で買い換え意欲を喚起できるか
米アップルは12日(日本時間13日)、スマートフォン「iPhone(アイフォーン)15」シリーズ4機種を22日に発売すると発表した。最上位モデルの価格は24万9800円(消費税込み)で、前機種より1万円値上がりした。チタニウム合金の採用などで機能性と高級感を追求しているものの、成熟が進んだスマホ市場で消費者の買い替え意欲を喚起できるかは未知数の面もある。(編集委員・小川淳、阿部未沙子、斎藤弘和)
4機種のアイフォーン15は、いずれも4800万画素のカメラ機能を搭載。充電端子はアップル独自の「ライトニング」端子が廃止され、新たに汎用端子である「USBタイプC」に全面的に移行した。欧州連合(EU)が2024年秋までにすべてのスマホやタブレットなどの充電端子をUSBタイプCに一本化することを受けての動きとみられる。
このほか、携帯電波の届かない場所で自動車トラブルに見舞われた際、人工衛星を経由したロードサービスにも対応する。
上位機種である「Pro」と「Pro Max」の筐体(きょうたい)にはアイフォーンシリーズ初となるチタニウム合金を採用した。宇宙船にも使われるレベルの高品質な合金で、軽量と高耐久性、見た目の美しさのバランスをとった。
これら上位機種には、自社開発で業界初となる3ナノメートル(ナノは10億分の1)チップ「A17 Pro」を搭載。6コアの画像処理半導体(GPU)は従来比で最大20%の高速化を実現し、高いレベルのゲーム体験などを提供可能としている。
消費税込みの価格はディスプレーサイズが6・1インチのアイフォーン15で12万4800円から。最も高額なのは最上位で6・7インチのPro Maxの記憶容量1テラバイト(テラは1兆)モデルで、24万9800円。予約は15日から受け付ける。
ただスマホ市場は成熟しており、足元の需要は停滞ぎみだ。米調査会社IDCは23年のスマートフォンの世界出荷台数が22年比4・7%減の11億5000万台になると推測。過去10年間で最低水準となる見込みだ。景気低迷やインフレの進行がスマホ需要の低下につながるとみている。
日本での状況も振るわない。MM総研(東京都港区)は5月に発表した調査結果で、23年度のスマホ出荷台数を前年度比2%減の2926万台と予測した。携帯電話端末全体では、23年度の出荷台数が同2・5%減の3113万台。27年度も23年度見通し比5・2%減の2952万台と見込む。
近年、スマホは「全体として買い替えサイクルが長くなっている」(販売代理店関係者)。米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」搭載機種も含めて高機能化が進行。原材料の高騰や為替の円安も相まって端末価格は上昇傾向にあり、エネルギーや食料品などの物価高も勘案して同じスマホを長く使う消費者が増える可能性もある。
携帯通信事業者への影響も注目される。通信各社は従来、第4世代通信(4G)利用者の5Gへの移行に力を注いできた。直近で発売されたスマホの大部分は5G対応であるものの、4G端末を持つ人は依然多い。アイフォーン15シリーズの価格面を敬遠する消費者が多く出て想定よりも販売が鈍るようであれば、通信事業者の戦略にも水を差しかねない。