安全に大きな支障…空港の地上支援、人手不足の深刻度
人材育成でANAとJAL連携
空港で飛行機誘導や貨物積み降ろしなどを行う地上支援業務(グランドハンドリング、グラハン)の人手不足が深刻化している。成田国際空港では新規就航や増便の受け入れに影響が出ているほか、過重労働などが原因とみられる空港内での車両追突事故が報告されている。航空旅客需要が回復する中、早急な安全対策と人材確保の対策が求められる。
成田国際空港が行った調査によると、グラハンの人手不足のため、週150便超あった新規就航や増便希望のうち、9月末時点で2023年度内に受け入れ見通しが立ったのは3分の2にとどまっていた。成田空港は結果を受けて調整を行い、現在は「状況は改善しつつある」(田村明比古社長)という。
航空労組連絡会(航空連)は、11月14日に羽田空港内で発生した車両追突事故を受け、グラハン労働者の安全確保について国土交通省航空局へ29日に申し入れを行った。同事故は運転者の居眠りが原因とされ、6人が負傷した。同様の事故は8月にも発生し、3人が負傷した。
航空連は事故の背景に、グラハンの人員不足や技量面の低下、過重労働を指摘。航空連の調査によると、早朝5時や6時から夜まで勤務する長時間労働や36協定違反を繰り返す事業者が報告されているという。
航空連では監督官庁である国交省に対し、グラハン各社の人員体制や教育の調査、問題のある事業者を是正させるための強い措置を求めている。
航空業界ではグラハンの労働環境の改善を急ぐため、空港グランドハンドリング協会を8月に設立したほか、全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)が11月に持続的な体制づくりへの協力を発表した。第1弾として24年4月からランプハンドリング業務の作業資格の相互承認を開始する。ANAかJALの訓練で両社の作業資格を取得できるようにすることで、業務委託先の人材育成の効率化につなげる狙いだ。