“裏方”が足りない…ANA・JALなど、持続可能な体制構築への緊急度
旅客数が回復する中、航空業界は持続可能な体制の構築を急ぐ。空港で航空機の誘導などを行うグランドハンドリング(グラハン)をはじめ“裏方”を中心に人手不足が深刻で、さらなる需要回復への対応が難しい。全日本空輸(ANA)や日本航空(JAL)など50社は25日、グラハンの共通課題に取り組む「空港グランドハンドリング協会」を設立した。航空連合は業界の魅力を発信する新企画を始めた。課題に向き合いコロナ禍から再出発する。(梶原洵子)
「競合関係にあったグラハン事業者が手を取り合う。個社では難しい業界の認知度の向上や従業員の定着率を上げるためのアクションなどに取り組む」。空港グランドハンドリング協会の会長に就いた小山田亜希子ANAエアポートサービス社長は同協会の設立会見でこう意気込みを語った。空港の機能維持に不可欠なグラハン業界の改善に向け、協会設立は重要な意味を持つ。
新型ウイルス感染症の水際対策緩和が進み、訪日外国人客数は順調に回復している。日本政府観光局によると7月の訪日外客数は232万600人(19年同月比77・6%)。団体旅行を制限してきた中国を除くと100%を超え、コロナ禍前を上回った。さらに政府は30年に訪日外国人客数6000万人を目標に掲げる。
中国から日本への団体旅行ビザも10日に解禁された。解禁後、ANA初の団体旅行客として23日に羽田空港に到着した10代男性は「食事が楽しみだ。文化も自然もある東京が好き」と久しぶりの日本旅行を喜んだ。
航空大手は需要回復をにらみ、国際線の増便を加速している。JALは23年度下期に、成田―香港線や関西―ロサンゼルス線、ホノルル線を増便する。ANAは中国線の増便などを行う。
一方、航空機の運航を支える人材の確保は大きな困難を抱える。57労組が所属する航空連合の内藤晃会長は「募集をかけても、人が集まらない」と嘆く。コロナ禍で需要が急減し、脆弱(ぜいじゃく)な業界イメージが広まった可能性もあるとみる。
そこで同連合は就職・転職活動中の人に現場の魅力を伝えるため、特設ウェブサイト「だから、この仕事が好き」を開設した。また「業界の魅力改善には、賃金や福利厚生を含め総合的に取り組まなければならない」(グラハン協会の内藤会長)とし、魅力発信以外にも幅広く活動する考えだ。
パイロットや客室乗務員に比べ、グラハンのような裏方の仕事は一般消費者への認知度が低い。今は専業も多いが、昔は航空会社の一機能が主体で、グラハンの課題が見えにくかった。グラハン協会はまず情報共有や議論を進め、さまざまな課題の解決を目指す。特に「カスタマーハラスメント対策は働く人を守るためやらなければならない」(小山田会長)と力を込める。
グラハン関連企業は国内に約400社あり、同協会は今後も参加企業を募り、発信力を高める。
島国の日本にとって航空は人やモノをつなぐ重要なインフラだ。航空業界に追い風が吹く今、将来にわたって発展できる体制を整える必要がある。