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上場廃止の東芝…容易でない経営再建に向けたカギ

上場廃止の東芝…容易でない経営再建に向けたカギ

東芝は臨時株主総会で上場廃止に向けた議案を決議した(11月=都内)

約8年にわたり混迷していた東芝の経営問題がひとまず決着した。東芝は20日に上場廃止となる。上場企業としての74年の歴史に幕を閉じ、国内投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)陣営とともに経営再建に臨む。

2015年の不正会計問題の発覚以来、東芝の経営は混乱が続いてきた。特に米国での原子力発電事業の巨額損失に伴い、短期的な成果を求めがちな“物言う株主”を含む国内外のファンドからの出資を受け入れて以降は、経営陣と物言う株主との対立は先鋭化し、中長期の事業戦略を立てられずにいた。

東芝はJIP陣営の実施するTOB(株式公開買い付け)に賛同することで上場廃止を選択。物言う株主と決別し、株主をJIP陣営に一本化することで、中長期の事業戦略を練り直す。東芝の島田太郎社長は11月に開いた臨時株主総会で「安定した株主の下、イノベーティブ(革新的)な技術を世界で再び輝かせたい」と表明した。

だが経営再建は容易でない。混乱の8年間に白物家電やテレビ、ヘルスケア、メモリー事業などを次々に手放しており、稼げる事業に乏しい。24年3月期の売上高利益率(ROS)は3%台にとどまる見通しで、収益性の低下は否めない。非上場化に伴う巨額の財務負担も重荷だ。

東芝は当面、再生可能エネルギーやパワー半導体などの事業を強化する。さらに中長期的にはITやOT(制御・運用技術)など長い歴史で培った資産をデジタルでつなぎ、カーボンニュートラル温室効果ガス排出量実質ゼロ)などの社会課題の解決に貢献するデータサービスを収益の柱に育てる計画を掲げる。量子技術や人工知能(AI)にも積極的に取り組み、“技術の東芝”として再度の飛躍を期す。

JIP陣営に出資しているロームやオリックス、中部電力など約20社と今後どのような連携体制を築けるかも、再建に向けてのカギを握る。


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日刊工業新聞 2023年12月5日

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