東芝が95億円投資、独自のリチウム電池を増産する狙い
東芝は横浜事業所(横浜市磯子区)内の産業用のリチウムイオン電池(LiB)を生産する工場に95億円を投じ、生産設備を増強する。21年に同工場を新設したばかりだが、需要の底堅さを受け、設備の新増設を決めた。2025年4月の稼働を予定する。東芝独自のLiBは長寿命性や急速充電、高入出力、安全性などに優れ、業界トップクラスの性能を誇る。車載用途など国内外で広がる需要に応える。
設備増強にあたり、蓄電池や関連部素材の技術開発や設備投資計画などを支援する経済産業省の補助金を受けたほか、横浜市による企業立地促進条例による助成も受ける。
東芝のLiBの生産は柏崎工場(新潟県柏崎市)が中核だが、カーボンニュートラル(CN、温室効果ガス排出量実質ゼロ)に向けた活動の世界的な高まりを受けて需要が急増。約162億円を投じて横浜事業所内に延べ床面積約2万7000平方メートルの工場を新設した。
電池事業の売上高は明らかにしていないが、22年2月公表の計画では、22年3月期に549億円だった売上高を31年3月期に2000億円まで拡大する方針を示していた。
東芝独自のLiBである「SCiB」は負極にチタン酸リチウムを採用することなどで高い性能を持つ。東海道新幹線の車両「N700S」のバッテリー装置に採用されたほか、JR西日本、東京メトロなどの車両にも使われる。自動車では日産自動車やスズキなどが採用しており、海外では電気自動車(EV)バスでの導入も進む。産業用機器や変電所などでも採用される。
蓄電池は経済安全保障推進法に基づく特定重要物資に指定されており、政府は国内製造基盤強化を支援している。東芝の島田太郎社長はSCiBについて「CN達成に欠かせない重要なデバイスとして幅広い分野で注文を頂いている」と期待を述べている。
【関連記事】 東芝のニュースをまとめて読める「ジャーナグラム」はこちらへ