韓国・釜山経由は「リスク」…神戸湾、国際ハブ復権なるか
大型船対応 拡張工事進む
かつて世界有数のコンテナ港だった神戸港が、復権に向けて動き出している。1980年に世界4位だったコンテナ取り扱い個数は2021年に73位と低迷。アジアのハブ港として韓国・釜山港に台頭を許した。ただ最近ではコロナ禍の物流混乱や脱炭素で船会社や荷主の意識が変わってきた。日本に国際基幹航路が寄港することは、経済安全保障上も重要性が増す。神戸港では貨物船の大型化やカーボンニュートラルポート(CNP)への対応など、多方面から港湾機能強化の取り組みが進む。(神戸・友広志保)
大阪港や神戸港を運営する阪神国際港湾(神戸市中央区)の担当者は、「日本の貨物を日本の港で輸出入できることが、コストと同等か、それ以上に重要だと気付いた企業は多い」と話す。コロナ禍で企業の意識が変化したという。実際、釜山港経由で日本と北米とを行き来する貨物が大幅に遅延し、輸送コストが高騰した。さらにロシアのウクライナ侵攻など地政学的リスクは高まる一方。「日本企業の生産活動を守るため、しっかり日本の港と世界とがつながる必要がある」(阪神国際港湾)。
しかし神戸港の取扱貨物量は伸び悩んでいる。国内工場の海外移転と、95年の阪神・淡路大震災による機能停止が主な要因で、中・小型船と大型船とで貨物を積み替える神戸港のトランシップ貨物は、国を挙げて整備された釜山港に流出してしまった格好だ。今や釜山港のトランシップ率は50%を超え、主な発着地は日本や中国。神戸港の取扱貨物量も18年には過去最高を記録してはいるが、台頭する中国や韓国の増加ペースに大きく引き離されている。
神戸港では取り扱い貨物量を増やそうと、これまで西日本が中心だった内航フィーダー網を拡大。22年11月に神戸と秋田、神戸と新潟を結ぶ内航フィーダー航路を開設した。さらに海外からも集貨しようと、日系企業が多く進出する東南アジアと、北米とを行き来するトランシップ貨物の獲得にも取り組む。
貨物船の大型化に対応した整備も進む。神戸沖の人工島であるポートアイランド(神戸市中央区)南側の第2期地区では拡張工事が25年度に完工予定だ。これにより神戸国際コンテナターミナル(KICT)では、岸壁の総延長が従来の1050メートルから1750メートルに伸びる。複数の船が来た場合も同時に荷役でき、着岸や荷役作業の利便性が高まる。またKICTと隣接する別のターミナルと共有するゲートを新たに設けるなど、一体的な利用を図る。
サプライチェーン(供給網)の脱炭素化を目指す企業が増える中で、港湾を脱炭素化するCNPの取り組みも重要になる。神戸市は11月末、公共埠頭(ふとう)で船舶への陸上電力供給を始めた。停泊中の船舶の発電機を止めることで、二酸化炭素(CO2)の排出を削減する。コンテナ船ではなく船員を育成する練習船向けだが、年180トンのCO2削減効果を見込んでいる。
航海中の船からのCO2排出削減についても、燃料を重油から液化天然ガス(LNG)に転換するなど、船会社の取り組みが進んでいる。阪神国際港湾は大阪ガスグループなどと連携し、海上で船舶にLNG燃料を供給するバンカリング船を建造し、26年度に大阪湾・瀬戸内エリアで就航させる計画だ。
「船舶の大型化やCNP、人手不足の顕在化などに対し、ハードとソフトの両面で同時並行的に施策を進める」と、神戸市の久元喜造市長は神戸港強化に積極的な姿勢を示す。復権には二の矢三の矢の取り組みが欠かせない。