スマホ市場の低迷鮮明…「折り畳めるスマホ」で需要喚起できるか
電気通信事業法改正、値引き上限増を好機に
スマートフォン市場の低迷が鮮明になっている。MM総研(東京都港区)によると、2023年度上期(4―9月)のスマホの国内出荷台数は、15年度以降の上期出荷台数としては最少となった。背景にあるのは買い替え需要の縮小や消費者の節約志向などだ。折り畳めるスマホの展開で消費者の関心を喚起しようとするメーカーがあるものの、普及はまだ先とみられる。他方、電気通信事業法の一部改正により端末の値引き額が引き上がる事例が出る見込みで、スマホ市場の回復に寄与する可能性がある。
MM総研の調査によると、23年度上期のスマホの国内出荷台数は前年同期比17%減の1157万台だった。MM総研はスマホの性能向上による買い替え期間の長期化や、為替の円安、材料価格の上昇による端末価格の値上げなどが要因と分析している。
FCNT(旧富士通コネクテッドテクノロジーズ、神奈川県大和市)や京セラといった国内スマホメーカーの撤退や事業縮小が相次いだことは、スマホ出荷額に影響しただけでなく、取引先にも打撃を及ぼした。例えばFCNTに半導体メモリーなどを販売してきた商社のトーメンデバイスは、FCNTの民事再生手続き開始の申し立てを受けて、23年4―6月期に特別損失を42億円計上した。スマホ需要が復調すれば、周辺市場の活性化にもつながる。
昨今、スマホメーカーが注力しているのが折り畳めるスマホだ。韓国サムスン電子や米グーグル、米モトローラ・モビリティなどが展開する。ただ、米アップルは、まだ投入していない。MM総研の横田英明取締役副所長は「品質の高い、折り畳める有機ELパネルを外部から調達する必要があることや、まだ様子見をしていること」を未発売の理由と推測する。
課題は価格だ。折り畳めるスマホは「市場ではまだ少数派で、1台当たりの開発コストが高い」(横田取締役副所長)。このため、販売価格も高くなる傾向にある。モトローラ・モビリティ・ジャパン(東京都千代田区)が11月に発売した「モトローラ レーザー40」は消費税込みで12万5800円だが、従来品「モトローラ レーザー40 ウルトラ」と比べて3万円安く設定した。
同社の松原丈太社長は「フォルダブル(折り畳める)スマホはプレミアムな価格帯でしか製品がなく、もったいない」と指摘。新製品について「求めやすい価格で提供する」と語った。
スマホ市場にとって好材料になる可能性があるのは、23年内に行われる予定の、電気通信事業法の一部改正だ。端末と回線をセット販売した際の値引き上限額が、現行の2万円(消費税抜き)から4万円(同)に引き上がる。
MM総研は「最終的な値引き額は各携帯キャリアが設定する」ため、全ての高額端末で4万円の値引きが実現するとは限らないと指摘。一方で「値引き額上限が引き上げられることは、出荷減少と利益率悪化で苦戦するメーカーと、家計のやりくりに苦慮するユーザー双方にプラスになる」と分析する。通信事業者やメーカーは、好機を捉えた事業活動を推進できるかが試される。