存在感高める「アンモニア」、三井化学が推進する事業強化の現在地
三井化学がアンモニア事業の基盤強化に取り組んでいる。アンモニアは工業用途や肥料向けなど、幅広い産業を支える化学製品だ。またカーボンニュートラル(温室効果ガス〈GHG〉排出量実質ゼロ)達成に向け、次世代のエネルギーである水素を含む化学製品などとしても存在感を高める。さまざまな産業の基盤としての役割だけでなく、環境対応での重要性が高まる。(山岸渉)
三井化学は1969年から、大阪工場(大阪府高石市)で生産能力年30万トン規模のアンモニアプラントを稼働。アクリロニトリルやカプロラクタムをはじめとする工業用途、肥料用などに幅広く供給している。尿素やメラミン、アドブルーといった誘導品プラントも持ち「一貫生産体制を取ることで最適生産を実現し、長年蓄積された運転・省エネ技術などで主に国内への安定供給を継続している」(担当者)と胸を張る。
ただアンモニアの製造においても、設備の老朽化や排出される二酸化炭素(CO2)の削減などが課題だ。これに対し、三井化学はアンモニアなどで国際持続可能性カーボン認証「ISCC PLUS認証」を取得し、環境対応に力を入れる。またアンモニアプラントから排出されるCO2を回収し、原料とする誘導品の拡大にも取り組む。他にも大型トラックの排ガス浄化に使用されるアドブルーの生産体制を拡充させる考えも示す。
一方、アンモニアは燃焼時にCO2を出さず、次世代エネルギーである水素を含む化学製品でもある。三井化学はアンモニア燃料への転換を志向。三井物産、IHI、関西電力と、大阪の臨海工業地帯で水素・アンモニアのサプライチェーン(供給網)構築に向けた検討も始めた。クリーンアンモニアの安定調達が可能になれば、尿素などをクリーン誘導品として展開できる。クリーンアンモニアからクリーン水素を取り出し、水素誘導品のクリーン化を進めることなども想定する。
競合他社でも、アンモニア活用の動きが広がる。使用済みプラスチックを水素やアンモニアにリサイクルする事業を進めるレゾナックは、三菱化工機、岐阜大学とアンモニア・水素利用分散型エネルギーシステムの研究開発で協力する。アンモニアから水素に分解する技術やユニットなどの研究開発に取り組み、環境に優しいアンモニアの供給で差別化を図る構えだ。
アンモニアも工業用途や肥料として使われるだけでなく、環境に優しい燃料などとしての重要性が一層高まっている。