アバター衣装を自動生成、ニコンが開発したシステムの仕組み
ニコンは仮想空間上のアバター(分身)に衣装を着せられるシステムの開発を進めている。アパレル大手のアダストリアが手がけるメタバース(仮想空間)でのファッションブランドの3次元(3D)化に同システムが採用された。コロナ禍を機に仮想空間の活用が進む中、現実に存在するあらゆるモノを3D化する需要が増えるとニコンは見込む。今後、市場調査を行いながら、数年内のシステム開発完了を目指す。
ニコン子会社のニコンシステム(東京都品川区)が展開する「SAI SOON(サイスーン)」を活用して新たなシステムを構築する。サイスーンは商品を撮影するだけで、商品画像の生成と商品の採寸などを行えるシステム。サイスーンに搭載した技術に、ニコン独自の人工知能(AI)技術と画像処理技術を組み合わせる。
まずは分身に着せたい衣装を台に載せ、衣装の表と裏をカメラで撮影する。そして衣装を袖や身頃といった部位ごとに分けて展開図のようにした後、分身に貼り付ける。これらの工程を自動化するのがニコンの新システムだ。AI技術により、衣装の撮影時に写すことが難しい死角部分を推測して再現できる。簡単な構造の服で、手直しの必要がなければ数十分ほどで撮影から分身に着せるまでを完了できるという。
現実にある衣服を3D化するのは「難易度が高い」(ニコン映像ソリューション推進室第一開発課の石津裕之氏)。従来、分身に衣装を着せる工程では複数回にわたる調整が必要で時間がかかっていた。ニコンが開発中のシステムを使うと分身向けの衣装データを自動で生成するため、作業時間を短くできる見込み。どの程度時間を短縮できるかは、アダストリアとの協力を通じて「検証しているところ」(石津氏)だ。
ただ、映像ソリューション推進室事業企画課の佐々木哲也氏によると「デザイナーなどからは、今までよりも質感やディテールがうまく表現できていると評価いただいた」。3D化できる衣装は長袖や半袖シャツ、スカート、パーカー、パンツだという。帽子などの小物への3D化の需要もあるようだ。
石津氏は開発中のシステムが注目を集めているとの認識を示す一方、アパレル業界における将来的な仮想空間の活用頻度は未知数と捉える。まずは協力先を増やし、業界を盛り上げたい考えだ。最終的には仮想空間でアバターを扱う幅広い事業者での導入を目指す。(阿部未沙子)