コロナで逆風も復活…三菱電機の「ジェットタオル」に注目が集まる背景
三菱電機のハンドドライヤー「ジェットタオル」は2023年に発売30周年を迎えた。ビルや商業施設などのトイレで定番の設備になっている製品だが、20年以降は新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、一斉に運転が停止されるという逆風もあった。ただ、22年にはオフィス向けの感染予防対策ガイドライン(指針)の規制対象から外れ、23年5月のガイドライン廃止で需要が戻ってきた。
現状は前年比2倍のペースの売れ行きだ。尋木保行上席執行役員は「約3年間の稼働停止期間から、どう需要を増やすかが課題だった。今は導入済みの施設で更新の需要があるほか、最近開業した施設や店舗で未設置だった場所への導入も進んでいる」と手応えを示す。
こうした中、コロナ禍前に比べて清潔感をより求める利用者が増え、ジェットタオルの「スリムタイプ衛生強化モデル」が注目されているという。同モデルは、設置空間の空気を24時間循環清浄してウイルスや菌を抑制する「ヘルスエアー機能」を搭載したファンを本体に組み込み、清潔な手洗い環境を維持する。アンモニア臭気の抑制機能もあり、アンモニアのガス濃度を自然減衰と比べて58%減らせる。
同機能は、ホコリ取りフィルターや電気集じん、脱臭フィルターで構成されている。手指の乾燥機能と循環清浄機能は独立して運転できるため、状況に応じた3パターンの運転設定ができる。
また従来使っている全面抗菌加工樹脂に加え、抗ウイルス加工樹脂を採用。同樹脂には幅広い微生物の生育抑止効果を持つ高分子カチオンポリマーが含まれる。製品本体に付着したウイルスにあるカプシドやエンベロープなどのたんぱく質を変質させ、本体表面のウイルスの数を減らす。
乾燥中の水滴飛散にも配慮した。風の吹き出し部分の手指乾燥用ノズルに加え、上段に水滴の飛散を抑制する丸穴ノズルを配置。再循環流を発生させて吹き返しを抑える2段ノズル構造で、飛ばした水滴が利用者へ当たる状況をほぼなくした。水滴が飛び散らず手にも残りにくいため、床など周囲の清潔感も保ちやすい。
羽田空港の旅客ターミナルや大規模オフィスビルなど、利用者が安心できる環境づくりで衛生への配慮をアピールしたい施設に導入されている。場所を取らないスリムタイプのため、個人経営の飲食店などの限られたスペースでも引き合いが増えているという。(編集委員・安藤光恵)
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