10倍以上の高速推定、富士通と理研が生成AIで創薬効率化
富士通と理化学研究所は生成人工知能(AI)を活用し、大量の電子顕微鏡画像から、たんぱく質の構造変化を広範囲に予測できるAI創薬技術を開発した。標的たんぱく質と抗体の複合体解析や分子の大域的な構造変化を高精度かつ高速に予測するコア技術の一つとして活用する。また、富士通はたんぱく質の構造変化の予測技術、先端技術を素早く試せるAI基盤のコンポーネント(部品)として提供を始めた。
共同研究では標的たんぱく質の大量の電子顕微鏡画像から、その立体構造の多様な形態と割合を正確に推定する生成AI技術と、推定された割合から標的たんぱく質の構造変化を予測する技術を開発。この二つの技術を基にたんぱく質の構造変化を3次元(3D)密度マップの連続的な変形として予測できるAI創薬技術を開発した。研究成果は医療用画像処理分野の国際会議「MICCAI 2023」で論文発表した。
今回の新技術によって、従来の手順に比べて10倍以上高速に、たんぱく質の形態と構造変化の推定が可能になるため、細菌やウイルスなどの標的たんぱく質に結合する薬剤の設計過程の革新が期待できる。
生命活動や病気のメカニズムと深く関わっているたんぱく質は柔軟で、さまざまな形態をとることで生体内の他の分子と相互作用している。例えば、ウイルスへの感染を抑制する薬を効率的に設計するには、薬の標的となるたんぱく質の形態や構造変化の様子を把握することが重要になる。だが標的たんぱく質の広範囲な構造変化を捉える上では、高度な専門知識や長期の研究期間、多額の研究開発費用が求められることが課題だった。
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日刊工業新聞 2023年10月17日