新薬化合物をロボットが自動合成、大鵬薬品が創薬生産性を高める
大鵬薬品工業は創薬の生産性向上に向け、新薬の候補となる化合物を自動で合成するロボットをつくば研究所(茨城県つくば市)に導入した。試薬などを扱う化学系の実験工程を自動化し、24時間365日休まず稼働する。創薬への人工知能(AI)活用などで検証すべき仮説が増えており、実験で検証する創薬のサイクルを効率良く回す。2年後をめどに精製工程にも導入し、スクリーニングまでの一貫した研究の自動化体制を整える。
初号機となるロボットは日立ハイテク(東京都港区、飯泉孝社長)と共同で開発した。試薬を混ぜて反応させるといった従来研究員が行っていた一連の化学実験工程を1台のロボットで代替する。併設のカメラで撮影した画像を認識しながら、人が使うものと同じ器具や装置をロボットアームが操作する。
創薬研究のエキスパートがロボット操作を担当し、自身が行う実験と同等以上の精度が得られることを確認した。夜間や週末などこれまで作業できなかった時間帯も止まることなく、またミスなく稼働するため、作業効率が飛躍的に高まる。
業界では細胞の培養など、生物系の工程にロボットを導入する動きが見られるが、危険な薬剤などを扱う化学系の工程を全自動化する例は珍しい。
同社は創薬の標的となるたんぱく中の特定のアミノ酸(主にシステイン)を認識し、共有結合を形成する独自の「システイノミクス創薬」を推進。そこで核となる化合物の候補をロボットで網羅的に合成し、化合物群(ライブラリー)を効率的に構築することで社内データベースの精度を高め、創薬の成功率を引き上げる狙いだ。
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日刊工業新聞2022年10月21日