環境対応、宅配、輸出…包装機械で目立つ新たなトレンド
包装機械業界で新たなトレンドが目立ってきた。プラスチック包装から紙包装への切り替え需要などに応える環境対応型製品の開発が相次いでいるほか、コロナ禍を経て拡大した宅配便用の薄型段ボールに適合した製品が登場した。また市場開拓余地の大きい海外を目指す動きもある。関連企業は、市場変化を成長の機会と捉え知恵を絞る。(編集委員・嶋田歩)
“環境配慮”製品開発 プラフィルムから紙に転換
賞味期限延長を実現する技術で食品ロス削減を支援、プラスチック包装から紙包装への変更に対応―。これらが環境対応型製品の開発テーマだ。
イシダ(京都市左京区)はトレー用シーラーの最新機種「QX―500」を開発し食品ロス削減を支援する。コンビニエンスストアやスーパーマーケットで見られるカットフルーツのデザート容器。中身を入れた容器に「ふた」をかぶせる方式が一般的だが、これだと鮮度維持のガスを充填(じゅうてん)しても、すき間から漏れ出してしまう。これに対してQX―500も採用するシール方式だと密閉できるため、食品を長く保存できる。
同社は「どのガスを使うかは中身の商品で異なる。当社はそのノウハウで差別化できる」と自信をみせる。毎分100トレーの高速対応のほか、フィルムに直接印字するプリンターと連動し、インクリボンやラベルを不要にした点も特徴だ。
伊藤忠紙パルプ(東京都中央区)はフジキカイ(愛知県北名古屋市)と共同で、エンボス紙に対応したピロー梱包機とシーラー梱包機を開発し、顧客向けに提案を始めた。ピロー包装は1枚のフィルムを背中合わせにして筒状にし、シールする方法だ。
小売店などが環境対応のため、包装をプラスチックフィルムから紙に転換する流れが起きているが、紙はフィルムと違って厚いため使える商品に制限がある。段ボール箱を使う選択肢もあるが、寸法が固定してしまい、輸送費を多く払う羽目になりかねない。
こうした中、伊藤忠紙パルプはエンボス紙対応のピロー梱包機とシーラー梱包機について「主にアパレルや化粧品、通販商品などの需要を想定している」と説明する。「基本的に製品はカスタマイズとなるが、どれくらいの価格ならば売れるかなど、商談を通じて探っていく」考えだ。
包材もプラスチックから紙への流れが起きている。アスウィル(名古屋市東区)は紙素材のピロー型エアクッションを開発。「機械部品から家電製品、建材など各方面から引き合いが来ている」(アスウィル)。またイムラは紙自体を透明にする技術を活用し、食品や化粧品、日用品などに環境対応のパッケージを提案。「デザイン性とサステナブル性を両立できる」(イムラ)とアピールする。
一方、東京自働機械製作所はジッパー付き袋に対応する縦型ピロー包装機で、資材消費を減らせる「TWFX―Z」を開発している。ロール状のジッパー資材を機械内でフィルムに接着する。「品種切り替え時の資材ロスも削減できる」(東京自働機械製作所)という。また「包装能力も従来機より23%アップした」とアピールする。
供給網・需要―コロナ禍の変化対応 国内で生産、ECに商機
コロナ禍で起きたサプライチェーン(供給網)や需要の変化を事業拡大につなげる試みもある。
四国化工機(徳島県北島町)は大型フォームフィルシール機「FD―12」を開発した。日本国内で生産するのがポイントだ。
FD―12はスーパーなどでよく見られるヨーグルトやプリンの4連パックの容器に関し、成型から充填、ふたのシール工程までを1台で行う。実は同種の包装機械は、すべて外国企業の製品で外国産だった。このためコロナ禍で海外渡航が一時制限された影響もあり、部品供給やメンテナンスが寸断される事態が続出した。
四国化工機はFD―12について「客先からなんとか国産で作ってくれないかとの要望が相次ぎ、開発することになった」と明かす。容器は元となる薄い樹脂シートを加熱して軟らかくし、圧縮空気で金型に密着させて作る。金型を押し込むと強弱でシートの薄さが変わってくるため、安定品質を保つのに苦労したという。国産のため、緊急メンテナンスが必要になった場合も国内拠点から作業員がすぐに駆けつけられる。「客の重要な時間とコストを削減できる」(四国化工機)と胸を張る。
同社は容量100ミリ―200ミリリットルの小型ペットボトル用成形充てん機「SBシリーズ」も手がける。ボトル成形から検査、洗浄、充填、キャッピングまでを全自動で行う。対象をコロナ禍での健康意識の高まりで需要が好調なペットボトル乳酸菌飲料に特化した。これにより従来比で5割の省スペース化を実現したという。工場内の同一面積での生産量アップに寄与する。
コロナ禍を経て全国的にEC需要が拡大し宅配便が増えた。この変化の波を捉えようと試みるのが、ストラパック(東京都中央区)だ。開発した高速ランダム型封かん機「AS―6S特」は、段ボールの高さで20ミリメートルサイズから対応可能だ。
EC市場が拡大する一方で共働きのため家を日中は留守にするという世帯は多く、郵便受けに投函(とうかん)できる薄型配達品の需要が伸びている。AS―6S特は宅配用段ボールの高さを測定するセンサーと、内部機構の連動制御で薄型段ボールにも対応できるようにした。異なるサイズの段ボールを連続して封かんできる点も特徴だ。
海外事業拡大 日・韓・台で交流組織
包装機械業界ではアジアをはじめとする海外への輸出拡大を目指す機運が高まっている。
日本国内の包装機械生産額のうち輸出の割合は8%前後にすぎない。今後、人口増や経済成長が見込めるアジアを中心に事業拡大の余地は大きい。日本の大手コンビニや外食チェーンが現地に進出するケースが増え、包装機械企業にとって日本と同様の需要が期待できる。また核家族化や個食化が進行する国々では、「日本メーカーがお家芸とする個別包装技術を生かせる」(日本包装機械工業会)との読みもある。
3日には日本包装機械工業会が、韓国包装機械工業会、台湾包装協会とともに「アジアパッケージングアソシエイツクラブ(APAC)」を設立した。3団体それぞれが主催する展示会に合わせてイベントや開催告知で協力すると同時に、人材や情報面の相互交流を推進する。業界をあげて海外事業拡大の機運が盛り上がる。
一方、海外では品質安全保証規格が未整備である問題や、低価格を武器とする中国のライバル企業に技術をコピーされないかといった不安もある。日本のある包装機械メーカーは「(海外のある取引先は)最初の1台か2台を日本メーカーから買ってコピーし、3台目から中国企業に発注するようになった」と明かす。
日本の包装機械企業にとって海外市場には大きなチャンスがあるが、「攻め」と同時に「守り」の取り組みも不可欠となる。
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