サントリー・日本コカ・コーラ…企業12社が打ち出したプラ廃棄物削減への“公約”
サントリーホールディングス(HD)や日本コカ・コーラなど12社が参加し、プラスチック製の容器包装や使い捨て製品の削減目標を発表するイベントが開かれた。サントリーHDは2023年末までに全ペットボトル重量の50%以上を再生材や植物由来にすると表明。日本コカ・コーラも25年までにすべての容器を再生可能な素材にする。各社が一斉に“公約”を打ち出し、プラスチック廃棄物による汚染対策を急ぐ。
イベントは非政府組織(NGO)の世界自然保護基金(WWF)ジャパンが呼びかけて開いた。都内の会場には12社の担当者が出席し、目標を発表した。
キリンホールディングスも25年までにペットボトルの再生材使用比率を38%以上にする。使用済みボトルの回収量確保が課題であり、同社のCSV戦略部の別所孝彦主務は「鉄道会社と回収スキームを構築した」と紹介した。
日本航空は25年までに利用者に提供する使い捨て製品から新規石油由来プラを全廃する。ウーバー・イーツ・ジャパンは、25年までに配達する80%の商品の容器包装をリサイクル素材かリユース素材などに転換する。飲食店がいずれかの素材を入手できる専用サイトを開設した。ほかにもネスレ日本やニッスイ、資生堂、ユニ・チャームも公表した。
12社は、22年2月に発足した「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025」の参画企業。「問題のあるもの、および、必ずしも必要のないものの使用を取りやめる」など5項目に対して公約することが参加条件だ。
プラ廃棄物による汚染が深刻化しており、WWFジャパンは早急な対策が必要として25年目標の設定にこだわる。WWFジャパンの三沢行弘マネージャーは「企業が主導する取り組みであり、各社が透明性を持って自主的にコミットメントを発表したことが評価できる」とした。
米国やインドでも同様の活動が展開されている。米国では参加企業が進捗(しんちょく)を毎年報告することで透明性を確保している。インドでは参加企業による廃棄物の回収が進んだ。また、両国とも企業同士の連携やイノベーション創出を期待している。
信頼獲得、ブランド向上
日本でも早速、参加企業間で事例が共有された。ユニリーバ・ジャパン・ホールディングスは、消費者が製品を洗浄して店舗に戻すと、グッズ交換や寄付に使えるポイントを付与する活動を紹介した。北島敬之代表職務執行者は「社員が発案し、周囲がサポートした。社員の提案を支援する企業文化が大事」と強調した。
江崎グリコは失敗談も披露した。19年、一部の紙容器飲料から付属ストローを廃止すると、消費者から「残念」「コストダウンなのだろうか」といった声が出た。事前に告知していなかったため「目的が正確に伝わらず、製品やメーカーへの不信感を喚起した」(グループ調達部の森田裕之部長)という。
この反省を生かし、給食用牛乳のストローを廃止する時、工場長や総務担当者が学校や教育委員会を訪問して目的を説明した。関係者とのコミュニケーションが功を奏し、学校から好意的な声が聞かれた。テレビや新聞もプラ削減の取り組みとして報道した。
プラ汚染を防ぐ新しい条約制定に向けた国際交渉が進んでおり、プラ使用への規制が確実に強まる。短期目標の設定は、企業に早期の対策を促すので規制への備えとなる。また、目標を公表した企業への社会からの信頼も高まるため、ブランド向上にもつながりそうだ。