電子部品は「特定重要物資」、新たに指定検討
政府は経済安全保障の観点から安定供給を確保する「特定重要物資」に、新たに電子部品を指定する方向で検討に入った。医療機器や電子機器などに幅広く使われる積層セラミックコンデンサー(MLCC)を中心に、経済活動の維持に不可欠だと判断した。また重要鉱物にウランを追加するほか、半導体や工作機械といった、既存の指定品目でも対象を拡充する。
11日、自民党の経済安全保障推進本部に案を提示した。すでに指定されている11品目への内容追加では、半導体や蓄電池で製造装置など、工作機械・産業用ロボットでボールネジやリニアガイドなど、航空機部品でスポンジチタンなどを加える。重要鉱物では中国による輸出規制に伴う供給リスクを念頭に、ガリウムとゲルマニウムが対象となるよう、経済安全保障推進法の取り組み方針の改定を検討する。有識者会議やパブリックコメントの実施を経て、年内にも新しい安定供給確保計画の策定を目指す。
電子部品はMLCCで世界首位の村田製作所など、高性能品を中心に日本のシェアが高い。一方、汎用品では外部依存性が高まりつつあるほか、近年は中国などによる工場誘致や技術者獲得の動きが活発化している。
ボールネジは日本精工、リニアガイドはTHK、スポンジチタンは大阪チタニウムテクノロジーズや東邦チタニウムが高い世界シェアを抱える。日本が強い領域を重要物資に指定することで、安定確保だけでなく国際競争力向上も見込める。
政府は10月末をめどに経済対策を打ち出す方針で、国内投資促進などサプライチェーン(供給網)強靱(きょうじん)化の議論を進めている。自民党の甘利明経済安保推進本部長は「関連予算は、かなり裾野が広い対応をしていかないといけない」と話した。
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日刊工業新聞 2023年10月12日