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“おそらく日本初”…ネイチャーポジティブブランド展、環境問題知るきっかけに

“おそらく日本初”…ネイチャーポジティブブランド展、環境問題知るきっかけに

「ネイチャーポジティブブランド展」。生物多様性・自然再生に貢献する商品を販売

神奈川県鎌倉市の雑貨店「えしかる屋」は9月24日まで、「ネイチャーポジティブブランド展」を開いた。ネイチャーポジティブは世界目標でありながら、認知度は低い。それでも生物多様性や自然の再生に貢献する商品が店内を埋め尽くすほどにそろった。“おそらく日本初”というネイチャーポジティブの期間限定販売会をのぞいてみた。(編集委員・松木喬)

鎌倉の雑貨店「えしかる屋」、自然に貢献する商品販売

えしかる屋はJR鎌倉駅から徒歩15分の場所にある。観光名所の鶴岡八幡宮と同じ「雪ノ下」地区にあり、黒崎りえ店長は「源頼朝の屋敷があったと言われている土地」と教えてくれた。そんな由緒のある場でネイチャーポジティブブランド展は開かれた。

ネイチャーポジティブとは「生物多様性の損失を止め、自然を回復させる」という意味で使われることが多い。2022年末、国連の生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で30年までに「自然を回復軌道に乗せる」という世界目標が合意され、活動が活発化した。

店内にはサンゴを傷めない成分でできた日焼け止め、オリーブの木を加工した食器、コルク製の財布など、生物多様性の保全や自然再生につながる商品が並んだ。

えしかる屋は複数のブランドからコンセプトに合う商品を仕入れるセレクトショップ。多数の商品が集まったが、プロデューサーの稲葉哲治さんによるとネイチャーポジティブを知っていたブランドは少数。「説明するとブランドも自分たちの商品がネイチャーポジティブに貢献すると気付いた。ブランドにも新たな商品切り口になっている」と振り返る。

店主の黒崎さん(左)とプロデューサーの稲葉さん

一方、ネイチャーポジティブを知っている来店者も少ない。「店内でネイチャーポジティブとは何かを詳細に説明はしないが、商品が問題を知るきっかけとなり、解決策も見えてくる」(稲葉さん)という。例えば、植物の茎を加工したアクセサリーは、生物の貴重さを教えてくれる一品だ。黄金の輝きは植物本来の色であり、職人が手仕事で仕上げている。この植物はブラジルの一部地域にしか自生せず、他地域への種の持ち出しが禁止されている。来店者は商品を通じ、固有種の保全が住民の生計手段を守ることにもなると理解できる。

駆除したウニのとげでできたアクセサリーは、自然再生に貢献できる商品だ。日本各地で魚の産卵や生育の場となる藻場がなくなり、漁業関係者が頭を悩ませている。海水温の上昇によって大量発生したウニが海藻を食べ尽くすことが要因の一つだ。来店者がアクセサリーを購入すると代金が駆除活動に回り、海の生態系回復を支援できる。

企業の間でもネイチャーポジティブは緑地保全が連想されやすいが、店内を見ていると商品展開でも貢献の余地が多いと分かる。

コンセプトに共感、近所の人や子どもも来店

えしかる屋は前身の店舗が都内にあったが、21年に鎌倉へ移った。「エシカル」は「倫理的」と訳され、社会課題解決につながる商品の購入は「エシカル消費」と呼ばれる。環境配慮などの認証付き商品があるが、稲葉さんは認証にこだわらず「私がエシカルと思った商品を売っている」と言う。

一部の環境団体は動物由来の商品に批判的だが、店頭ではアルパカの毛でできた商品を扱う。伸びきった毛を刈るとアルパカは過ごしやすくなり、商品にすると天然資源を有効活用できる。プラスチックも問題視されるが、店頭には海岸に漂着したプラスチックゴミを原料とする商品もある。「あえて多様な商品を置くことで、解決を考えるきっかけになればいい」(稲葉さん)と思いを語る。

休日はサステナビリティー(持続可能性)に関心の高い若い層の来店が多いが、平日はオリジナリティーのある商品を好む近所の人が来る。「商品の生い立ちを知ってさらに気に入ってくれる」(黒崎店長)という。また、友達のプレゼントを探そうと品定めする子どもの姿も見られる。価格や品質だけでなく、商品のコンセプトに共感して購入する層が確実に存在する。製造業の海外移転が進んだが、稲葉さんは「日本にも思いを持った作り手がおり、モノづくりの可能性が残っている」と確信する。

日刊工業新聞 2023年09月29日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
私の本『自然再生をビジネスに活かす ネイチャーポジティブ』(壁側に見える)も販売させていただきました。一緒に並べてもらい、うれしかったです。鎌倉はサステナブルやエシカルを名乗る催しが多く、詳しい方も多くいて地域性を感じました。

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