AI関連予算要求が1500億円超え…その内訳と課題
政府の2024年度概算要求で人工知能(AI)関連予算が1500億円を超えたことが分かった。経済産業省は生成系AIやデジタル社会実現の事業として1591億円を計上した。文部科学省は生成系AIの人材育成や基礎研究、教育活用などに約290億円を計上。非関連予算を差し引き、総務省事業を加えると1790億円を超えた。23年春の自由民主党提言では1500億円が目安と見られていた。6年間予算規模を維持できれば1兆円超の投資が実現できる。
自民党の部会に各府省が示した概算要求案を集計した。経産省は「デジタル社会の実現・生成AIへの対応」として23年度366億円から4倍増の1591億円を計上。ここから次世代エアモビリティーや無人自動運転、中堅・中核企業の経営力向上支援などの非AI関連事業を除くと1441億円となった。
文科省はAI研究事業を中心に、AI開発力強化として238億円を計上した。文化庁の日本語コーパス整備事業や初等中等教育の公務のデジタル化、先端技術活用事業などを加えると約290億円となる。
総務省の情報通信研究機構での大規模言語モデル(LLM)の開発や多言語翻訳AIの開発、大容量光通信の事業を加えると、3省合計で約1790億円となった。経産・文科・総務の3省がAI開発側の主体となる。
ここに内閣府の経済安全保障重要技術開発事業や防衛省のブレークスルー研究、農林水産省のスマート農業、厚生労働省のAI創薬研究などが加わるため、AI活用側の事業を足すと2000億円を超える可能性もある。これらは公募で進められるため、AIの提案が採用されるかどうかで総額が変動する。
AI予算の規模を巡っては、3月末の自民党デジタル社会推進本部のホワイトペーパーは「諸外国に比して国際的な競争優位を図る内容と規模での取り組みが必要」と提言し、参考として英国の9億ポンド(約1670億円、当時1450億円)のAI投資を掲げた。概算要求段階ではあるが、政府は一定の回答ができたといえる。
課題は政策間の相乗効果評価や官民での協調投資になる。AI人材の育成と技術開発、スタートアップ支援などの施策がかみ合わなければ社会実装につながらない。政策一つひとつの効果評価は実施しているが、各施策の連関を評価し改善することが難しかった。産業界の投資を呼び込み、6年間、投資規模を維持できれば1兆円を超える投資になる。“AI後進国”として反転攻勢につながるか注視される。