防衛省が「防衛技術指針」策定、列挙された重要分野12項目とは
防衛省は28日、日本の防衛技術基盤の強化に関して具体的な方針を示した「防衛技術指針2023」を策定したと発表した。科学技術の進展が従来の戦闘様相を一変させる状況を踏まえ、民間技術とイノベーションを防衛装備に取り入れると同時に、防衛省の研究開発成果も民間に積極的に社会還元すべきだと説いた。将来の戦い方を生み出す重要な技術分野として12項目を列挙、スタートアップなどこれまで防衛分野と関係が薄かった企業などとの掛け合わせで技術ソリューションを育てていくことが重要だとした。
12分野は無人・自律化やセンシング、情報処理技術、ネットワーク技術、エネルギー活用技術などで、それぞれに分身コントロール技術や量子センシング、量子暗号通信技術や広域無線給電技術など具体的なテーマを示した。
エネルギーでは大気中から燃料を得られれば給油や充電行為が不要となり行動範囲を劇的に広げられるとした。新機能素材では現在の材料より強度が1、2ケタ高い材料ができれば兵器スタイルも変わるほか、元の形に修復できる材料の登場で部品供給する必要がなくなり、補給や整備の負担、部隊活動のあり方なども抜本的に変えられるとしている。
センシングについては、ステルス化技術を例に挙げ、物理的な大きさと見かけの大きさを変える技術が進展し、レーダーのような既存の常識だけではセンシングが成立しなくなっていると指摘。こうした従来の発想にとらわれない技術開発では防衛省外の技術専門家やスタートアップの知見を取り入れることが不可欠であり、短期間で事業化を目指すスタートアップの研究参加を促すために、年度契約のような防衛省の制度や仕組みを変えていくことも必要だとした。
一方で電池開発を例に挙げ、民間では長く使うエネルギー密度を重視するが、防衛装備では一度に大きなエネルギーを出すための出力密度が求められるとし、民生分野で必要とされない特殊な分野について防衛省の投資が必要だとした。
民間との技術交流の成果を早期に出すために、研究開発の早い段階で防衛省のニーズを民間に示し、企業側が研究開発や投資を行いやすくするとともに、企業の提案を積極的に取り入れることも重要だと説いた。
自前主義に陥り、対外発信に消極的だったこれまでのスタイルを反省し、装備・技術ニーズを対外にわかりやすく示すことで民間企業や研究機関がアクセスしやすくし、科学技術・イノベーションにつなげる。