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スマホでリモート合奏、ソフトバンクが5G活用で音の世界豊かに

スマホでリモート合奏、ソフトバンクが5G活用で音の世界豊かに

スマホを通じて手軽にリモート合奏を楽しめるようにする

コロナ禍を機にデジタル技術を用いたテレワークの普及が進み、音楽分野でも離れた場所にいる演奏者同士でリモート合奏ができるサービスの利便性が高まっている。ソフトバンクは第5世代通信(5G)の商用網上でヤマハのリモート合奏サービス「シンクルーム」を使う実証実験を始めた。従来の携帯通信回線ではリモート合奏に必要な低遅延の双方向通信を安定して確保できなかったが、5Gによりスマートフォンを通じて手軽にリモート合奏を楽しめるようにする。

シンクルームはインターネット回線を通じ、最大5拠点の利用者間でリモート合奏ができる。専用アプリケーションをインストールしてアカウント登録するだけで無料で利用可能。ヤマハの独自技術「ネットデュエット」を用いてオーディオデータを双方向で送受信する際の遅れを極小化し、ほぼ違和感のないオンラインセッションを楽しめる。

大気中で音が伝わる速さは毎秒約340メートル。通常の音楽の合奏では10メートル先の相手に音が届くまでに30ミリ秒(1ミリ秒は1000分の1秒)の遅れがある。この程度の遅れであれば問題なく合奏できるが、遅れが大きくなるほど難しさが増す。家庭用インターネットで使う光回線をつないだパソコンを使えば快適なオンライン合奏が可能だが、従来の携帯通信網では安定した低遅延通信ができず、スマホを通じた合奏は困難だった。

今回の実証では複数台のスマホの双方向通信を安定して低遅延化できるソフトバンクの技術「SRv6 MUP」を活用した。

同技術は、端末の近くでデータを処理するマルチアクセス・エッジコンピューティング(MEC)、通信ネットワークを仮想的に分割するネットワークスライシングといった5Gの特徴を生かせる技術を効果的に低コストで利用可能。スマホの双方向通信を行う際に主要拠点のユーザーデータ処理装置(UPF)を経由することなく最短ルートでの通信ができるため、通信の低遅延化が期待できる。

ヤマハの大村寛子執行役員ブランド戦略本部長は「オンライン合奏という文化の普及には、インフラとなるネットワーク技術の発展が不可欠だ」とした上で「音楽を楽しむ人々の世界がより豊かになる可能性を感じている」とソフトバンクとの共同実証に期待を寄せる。今後は実証エリアを拡充し、リモート合奏をより手軽に楽しめる社会の実現を目指す。(編集委員・水嶋真人)

日刊工業新聞 2023年09月12日

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