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使用寿命が5000時間…高耐久のPEFCスタックがすごい

使用寿命が5000時間…高耐久のPEFCスタックがすごい

兵庫県大の伊藤教授が研究するカーボンフリーの燃料電池向け白金触媒。酸化スズ(左)と白金を担持させた酸化スズ

ユメックス(兵庫県姫路市、千木慶隆社長)は、兵庫県立大学と連携し、2026年をめどに使用寿命が5000時間の固体高分子形燃料電池(PEFC)スタックの試作品を完成する。ユメックスの金属薄膜セパレーターと、兵庫県大のカーボン担体を使わない酸素還元触媒をスタックとしてモジュール化し実証。それぞれの性能向上や新たな知見獲得を狙う。PEFCの普及のカギとなる低価格化と高耐久化実現につなげる。

ユメックスは産業用光源メーカー。15年、新規事業探索の一環でPEFC用金属薄膜セパレーターの開発に着手した。ユメックスは兵庫県大との実証を経て、将来的なセパレーターの事業化につなげたい考え。スタックまでモジュール化した上での販売も視野に入れる。

PEFCの一般的な触媒は白金と土台となるカーボン担体の組み合わせだが、兵庫県大の伊藤省吾教授はカーボン担体の代わりに酸化スズや、酸化スズにアンチモンを加えた材料などを検討。カーボンフリーな白金触媒は一般的な触媒と比べ使用初期の活性で劣るが、長期間使用してもほとんど劣化しない。24年度中に使用初期の活性を一般的な触媒と同等に向上し、活性と高耐久性の両立を実現する。

PEFCセルは電解質膜を中心に両側を触媒層、ガス拡散層、セパレーターで挟んだ構造。電解質膜への触媒のコーティング手法は両者で検討を進めている段階。ガス拡散層はカーボンメッシュ材料を外部から調達する方針。

PEFCスタックはコスト割合がセパレーターが27%、触媒が45%を占め、これらのコスト低減や長寿命化が普及のカギとなる。セパレーターおよび触媒の開発事業は、ユメックスを幹事社として姫路市新産業創出支援補助金に採択された。2カ年事業で、23年度は600万円の補助が決定している。

日刊工業新聞 2023年月9月5日

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