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国立大学の“悲鳴”に対応…光熱費高騰で省エネ機器整備に4.3倍の予算要求

国立大学の“悲鳴”に対応…光熱費高騰で省エネ機器整備に4.3倍の予算要求

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文部科学省は2024年度予算の概算要求で、国立大学の光熱費高騰に対応した省エネルギー機器導入などの設備整備に446億円を盛り込む。前年度予算額と比べ4・3倍となる。また運営費交付金による教育研究の組織改革に新規で85億円を充て、7大学・件を支援する。福島大学の水素エネルギー総合研究所(仮称)や千葉大学の“宇宙園芸”の研究、京都大学の研究データ基盤整備の全学改革などが対象となる。

国立大学の教育研究組織の改革支援(新規)

運営費交付金内の設備整備は照明機器の発光ダイオード(LED)化など、省エネの新型に置き換えてもらうのが狙い。設備は大学の資産として残るため、電気代を補助するよりも良いと判断した。要求額は環境やデジタル化の対応が中心だった前年度から大幅増になる。

国立大は大型機器を使う研究を含め電力消費量が大きい。物価上昇で負担増が年数十億円となっている大学もあり、国立大学協会が文科省に支援の緊急要望を出していた。

教育研究組織の改革支援の要求額は243億円で、うち85億円が新規。グリーン半導体や農学のデジタル変革(DX)、国際化などの構想をエリアや教育・研究別のバランスを取りつつ支援する。国立大学法人運営費交付金全体では1兆1089億円の要求となり、前年度比2・8%増。

同交付金とは別枠となる国立大学経営改革促進事業は70億円の要求で、同1・4倍。学長のリーダーシップを支える狙いで、文科省の「地域中核・特色ある研究大学」事業に各大学が出したプランなどを後押しする。

日刊工業新聞 2023年月8月29日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
電気代値上げに対する各大学の悲鳴は、春先から気になっていた。今回、文科省の国立大学法人支援課で打ち出す方策が、「使って消えるだけの支援金」にならなかった点は、とてもよいと感じた。新型コロナ対応を含め近年は、大学だけでなく国民全体が、「財源や国としての長期的な成長戦略(痛みを伴うもの)を考えずに、、使って消えるだけの資金支援を、求め続ける体質になってしまったのでは…」と気になっていたからだ。公的な資金は基本、未来に向けた前向きの転換を後押しするためのもの、と心したい。

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