食感定量化で食品開発高度化、山形大が食べ物を識別する咀嚼装置
山形大学の広瀬航佑大学院生と小川純准教授、古川英光教授らは、データから食べ物を識別する咀嚼(そしゃく)装置を開発した。人間の歯や舌などの形状と硬さを再現して現実の咀嚼感に近づけた。ワッフルや板チョコなど8種類の菓子を咀嚼データから識別できた。食感を定量化することで食品開発の高度化につながる。
顎の上下運動と口腔(こうくう)を再現した。歯や顎を硬いポリ乳酸(PLA)樹脂、歯肉に相当する部分を柔らかいシリコーン樹脂、舌を粘着性の柔らかいゲルで再現。舌と上下の顎に圧電センサーを配置して食べ物を咀嚼する振動データを計測する。
実験では歯型と咀嚼速度を変えてデータを集めた。咀嚼が進むにつれて装置の柔らかい部分が変形するため、咀嚼を反映した情報が含まれる物理リザバーとして機能する。
このデータを機械学習で判定すると95―100%の識別精度が得られた。機械学習自体はチューニングしていないため、識別しやすいデータが得られる歯型や咀嚼速度があるということになる。今後、唾液の供給機能や奥歯でのすりつぶし運動などを加える。
人間が料理のおいしさを決める要素は味やにおいに強く影響され、食感は優先順位が低い。そのためデジタル化が進んでいなかった。各食品の食感データが整うと、食品ごとに食感を比較する地図を作れる。咀嚼感が制御された食品を試して一人ひとりにあった食品を設計したり、高齢者など嚥下(えんげ)機能が低下した人向けの食品を開発したりしやすくなる。
日刊工業新聞 2023年08月25日