受注見通し1300億円減…世界経済の減速懸念でロボット産業にも陰り
世界経済の減速懸念がロボット産業にも影響を与えている。日本ロボット工業会は5月に2023年の受注額見通し(非会員含む)を年初予想比1300億円減の1兆200億円(22年比8・3%減)に見直した。世界的な労働者不足や生産性向上といったメガトレンドを背景に潜在的な自動化需要は継続するが、世界最大のロボット市場である中国の景気回復の遅れなどを理由に、“見かけの数字上”は以前までの勢いが失われつつある。(増重直樹)
直近の統計でも弱さが見られる。日本ロボット工業会が公表した23年4―6月期の産業用ロボット受注額(会員ベース)は前年同期比18・7%減の1967億円となった。22年4―6月期が2420億円と高水準だったこともあり、減少幅が大きく表れた側面はあるものの、22年1―3月期の2567億円をピークに受注額は減少傾向を示しており、2000億円割れはコロナ禍の影響も濃かった20年7―9月期以来だ。
理由の一つに考えられるのが、米国が主導する半導体分野の対中輸出規制の強化。これが中国における設備投資判断の先送りにつながった。実際、同工業会の23年4―6月期統計では中国市場向けの輸出額が前年同期比約150億円減の675億円まで低下。業界関係者は「米中の半導体絡みの動きは先が見えない。自動化の機運は依然高いが、次の投資判断が遅れている」として、景気回復が想定より後ろ倒しになる可能性も危惧する。
ロボットメーカーの業績への影響はまだら模様だ。ファナックは24年3月期連結業績予想の売上高と各利益段階を下方修正した。山口賢治社長は中国市場について「設備投資の様子見が続いている。投資マインドが上がっていない」と指摘。同社の23年4―6月期の連結地域別受注高で中国市場は同1―3月期比41・4%減の365億円となり、ロボットおよびロボマシンで大幅に減少したことを説明した。
川崎重工業も高いシェアを持つ半導体製造装置向けロボットの減少などを背景に、24年3月期連結業績予想(国際会計基準)におけるロボット部門の予想を引き下げた。山本克也副社長は「半導体製造装置市場は期初の想定より足元の状況が芳しくない。少なくとも現段階ではポジティブな兆しは見当たらない」とし、「人工知能(AI)関連やグリーン投資関係で新たな半導体需要が生まれつつある24年度以降は改善する」との見方を示す。
一方、安川電機は23年3―5月期連結決算(国際会計基準)でロボット事業の売上高が前年同期比18・5%増の528億円となった。
不二越も22年12月―23年5月期連結決算でロボット事業は同43・2%増の約232億円と伸びた。黒沢勉社長は「下期も好調が見込まれる」と期待する。
堅調なロボット産業をけん引してきた電気自動車(EV)関連投資でも以前までの高水準の設備投資が続くか否かで見方が分かれる。潜在的需要は続くものの、足元の受注環境に限れば不透明感が強まっている状況だ。
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