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ベネッセ、専修大が導入…生成AIは学習のあり方を変えるか

ベネッセ、専修大が導入…生成AIは学習のあり方を変えるか

AIのキャラクターが自由研究のテーマを提案するとともに、利用者の意欲を高めるようにコメントする

生成人工知能(AI)を学習に生かす動きが広がっている。ベネッセコーポレーション(岡山市、小林仁社長)は夏休みの自由研究に悩みがちな小学生向けに、テーマ設定などに役立つ生成AIサービスを無償提供している。専修大学は情報系の学生の演習に、対話型AI「チャットGPT」を活用する。AIの精度向上の余地は大きく、学習のあり方を変える可能性がある。思考力を高める教育を前提にAIの導入が進みそうだ。(孝志勇輔)

ベネッセ 自由研究テーマ設定支援

「優先して取り組むテーマだと考えていた」。親会社のベネッセホールディングスでデジタル変革(DX)を推進する橋本英知専務執行役員は、小学生向け生成AIサービスの狙いをこう説明する。

ベネッセは7月下旬から同サービスを提供している。小学生とその保護者も悩む自由研究に対応するために、利用者がAIのキャラクターとのやりとりを通じて、テーマやアイデアを見つけやすくした。答えを教えるのではなく、思考力が高まるように設計されており、上手に質問するこつも紹介している。「キャラクターが子どもたちのモチベーションを高めるようにコメントする」(橋本専務執行役員)という。

ただ、生成AIなどを使い過ぎることを懸念する保護者は少なくない。そのため利用者が1日に同サービスで質問できる回数に制限を設けている。生成AIの利用法やルールなどを学ぶ動画も用意した。

このほかに「読書感想文を書いて」といった目的外の質問などをした場合には、警告メッセージを表示して、質問を止めるように促す。

通信教育「進研ゼミ」をはじめ子ども向けサービスを展開してきたノウハウも生成AIに生かしている。教育上ふさわしくない言葉や情報が入力された場合、フィルタリング機能を通じて回答しないように設計しており、安全・安心な利用を徹底した。

夏休みも残り2週間を切った。自由研究がまだ手つかずな状態の小学生にとっては焦り出すタイミングでもあり、生成AIサービスが頼もしい味方となりそうだ。

専修大 情報系学生の演習にチャットGPT導入

フィールド演習でのチャットGPTとのやりとり

専修大学はネットワーク情報学部の3年生が取り組む「フィールド演習」にチャットGPTを導入した。AIを“パートナー”として利用できるようにし、ルールは細かく設けていない。演習の提出物にチャットGPTとのやりとりが分かる画面のスクリーンショットを添付する必要があるほかは、個人情報を入力しないといった基本的な注意事項を守ってもらうようにしている。ネットワーク情報学部長の飯田周作教授は「AIをパートナーに(学生の)思考を高めるのは大いに有効」と説明する。

チャットGPTを活用する背景には、フィールド演習が講義などで学ぶ内容とは大きく異なる点にある。演習のテーマが「人が自然とふれあう機会や動機を増やす工夫」「外来動植物による生態系の問題を解決する工夫」というように、自然と人間の関係を修復し、育てていくことを試みる。「学生にとっては戸惑うテーマで、答えが定まりにくい」(飯田教授)という。しかも演習は個人で取り組む形式だ。

そこで「チャットGPTが(知識などを)融合したものを文章で返してくれる」(同)ことを踏まえて導入した。インターネット検索では、断片的な情報や知識しか得られないのとは対照的だ。AIが学生の相談相手であるものの、あくまでも補助的なツールに位置付けている。

専修大は演習を通じて、問題に対する洞察力や問題の解決方法を導き出す思考力などを養うことを目指している。成果を出すハードルが高いといえる演習で、チャットGPTが果たす役割は小さくない。

文科省 暫定指針で不適切使用防止

米オープンAIがチャットGPTを2022年秋に公開して以降、生成AIへの関心が集まり、学習に導入する機運が高まりつつある。生成AIは教師に代わる存在になり得るのか。専修大の飯田教授は「その問いに対して半分はイエスであり、半分はノーだ」と話す。

生成AIの精度向上が道半ばとはいえ、例えば学習内容を補足する説明などを担える可能性はある。しかも「個人学習の効率性などをかなり高められる」(飯田教授)との見方もある。

一方、教師の役割が時代とともに変化しており、現在は学習目標に適した問題設定や体験型演習の実施なども求められている。こうした対応を生成AIに任せるのは難しいといえる。

教育現場での活用が手探りの状況で、文部科学省は暫定的なガイドラインを7月に公表した。生徒が夏休みの課題をこなす際に不適切に生成AIを使うことなどを踏まえた対応だ。

生成AIのリスクや懸念への対策を十分に講じることができる一部の学校で試験的な導入を進める方向性を示し、教師もAIの知見を高める必要があるとした。不適切な活用例としては、テストで生徒に使わせたり、生成AIによる生成物をそのままコンクールの作品や小論文として提出したりすることを挙げている。

日刊工業新聞 2023年08月21日

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