ニュースイッチ

EV用充電器15万基なるか、インフラ整備促進への論点

経産省がロードマップ策定

経済産業省が電気自動車(EV)用充電器の整備促進に向けたロードマップ(工程表)の策定作業を進めている。既設の集合住宅への設置戦略や充電時の課金制度のあり方などが論点となる。政府は2030年までにEV用充電器を現状比5倍の15万基にする計画を掲げている。EVの普及には充電インフラの整備が欠かせない。単に充電器の数を増やすだけでなく、ユーザーの利便性を踏まえた最適な配置や充電サービスの質の向上につながる施策が求められている。

経産省は有識者検討会を通じ、自動車や充電設備関連事業者などに対し、充電器の整備に関するヒアリングを進めている。EV普及の進捗(しんちょく)や充電器をめぐる課題を洗い出し、30年までに15万基とする既存の目標数値のあり方を含めて議論。9月にも工程表をまとめる。官民で工程表を共有し、充電インフラの整備加速につなげる。

充電インフラ整備の論点の一つが既設の集合住宅への整備促進策だ。戸建て住宅や集合住宅の駐車場での充電は「基礎充電」と呼ばれ、充電インフラを支える柱の一つ。EVユーザーが増える中、特に集合住宅に充電器を整備する重要性が高まっている。東京都は25年に新築マンションやビルへのEV用充電器設置を義務化する。

ただ、既設の集合住宅への充電器設置は住民と合意形成を図る必要があり、ハードルが高く、十分に整備が進んでいるとは言いがたい。工程表ではヒアリングの結果を踏まえ、既設集合住宅に充電器を設置しやすい環境整備に向けた施策を盛り込む方針だ。

課金制度のあり方も論点だ。現在、日本では充電時間に応じて料金を課金する「時間制料金」が主流だが、欧米では充電した電力量に応じた「従量制課金」を採用している。

日本でも充電器の高出力化・複数口化が進んでおり、今後、充電サービス事業者がEVユーザーに対し、質の高いサービスを継続するには従量制課金への移行が避けて通れない見通し。従量制課金の導入時期や普及策について検討する。

政府は30年に新車販売に占めるEVとプラグインハイブリッド車(PHV)の割合を2―3割に、35年までには新車販売の全てを電動車にする目標を掲げる。「電動車の普及と充電インフラの整備は車の両輪。バランスよく進めていかなければならない」(経産省幹部)とし、工程表の策定作業を急ぐ。


【関連記事】 EVでも成長を目指すオイルシールメーカーの圧倒的強さ
日刊工業新聞 2023年07月19日

編集部のおすすめ