部品不足もなんのその、エアコン世界販売を伸ばすダイキンの圧巻
ダイキン工業が銅などの高騰や部品不足にもかかわらず、空調機(エアコン)を増産している。銅より安いアルミニウムなどを原料として増やし、足りない電装品の自社組み立ても始めた。受注の好機を部品不足などで逃さず、省エネルギーや快適性などの高い新製品で世界販売を伸ばしている。製造や調達、開発が迅速に連携して知恵も絞り、経済情勢の激変に合わせた柔軟なモノづくりの体制を築く。(大阪・田井茂)
「2021年度はコロナ禍からの需要回復を着実につかんだ。22年度は過去最高の887万台を目指す」―。ダイキンの森田重樹執行役員空調生産本部長は、前年度比12・4%増となるルームエアコンの世界生産目標数についてこう語る。必要な部品や量の違いから一概に比較できないが、部品不足に苦しむ自動車や空調以外の家電などに比べ、生産の増加幅は大きいとみられる。
原料では熱交換器、配管、モーターに使う銅の使用量を23年度までに20年度比で6割減らし、アルミやステンレスに切り替えていく。海外生産もアルミ転換を進める。ただ「金属はそれぞれ特性が異なり、転換は簡単でない」(森田本部長)。
配管などを接合するロウ付けの可能な温度幅は、銅が110度Cに対し、アルミは25度Cしかない。融点も銅より低く温度管理が難しい。そこで熟練者の技能をロボットに置き換え、安定した品質で海外でも加工できる自動設備を開発した。アルミの方が安価で調達もしやすい。性能も銅と同じに保ち、仮に銅価格が下がっても置き換えを推し進める。
エアコンは約3000点の部品からなる。その中でも電装品は中国のロックダウン(都市封鎖)などで深刻な不足に陥った。「綱渡りとなり、4―5月には生産に影響した」(同)。だがあきらめず、足りない電装品の組み立て工程を中国から滋賀製作所(滋賀県草津市)に移し、自ら組み立て始めた。種類によっては自前で組み立てられる技術力を発揮。総力を挙げ、6月以降に生産の遅れを取り戻している。
電装品のグローバルな代替調達も奏功した。調達と開発が協力し、品質に支障ない同じ仕様の半導体の有無や、マイコンのピンの数まで調べ上げ、代替部品を急きょ34種類適用した。代替も含む複数メーカーから確実に確保する。森田本部長は「海外の生産拠点長はほぼ全員が生産本部出身。ツーカーで話せる」とし、部品在庫などの情報も世界で迅速に共有し対処できると胸を張る。部品の標準・共通化も進めてきたため、短期間に満遍なく代替しやすい。
製造業では既存製品の値上げで部材価格高騰の一部を転嫁する例が多い。一方、ダイキンは省エネや換気・空気清浄など付加価値の高い新製品に全面改良するタイミングで、価格を上乗せしている。空調営業本部の石井克典副本部長は「単純に価格を上げるのではなく差別化し、納得いただいて売価を上げていく」と説明する。モノづくりを巧みに変え、競争力と稼ぐ力を強めようとしている。
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