【独自調査】下期「上向く」69%超、国内景気に明るい兆し
日本経済は明るさを増している―。日刊工業新聞社が実施した景気定点観測調査によると、2023年下期(7―12月)の国内景気について「緩やかに拡大」と回答した経営者は全体の69・5%を占めて最も多かった。24年上期(1―6月)は「緩やかに拡大」と予想する経営者がさらに増えて同73・5%に達した。新型コロナウイルス感染症がこれまでの2類相当から5類に移行し、経済活動がようやく正常化に向けて動き出したところを好感したと見られる。ただ海外経済をはじめ、エネルギー・素材価格の動向などは景気の足を引っ張りかねず、懸案は多い。
足元の景況感は「緩やかに拡大」と回答した経営者が65・0%と過半を占め、前回調査(23年1月)の39・5%から大きく改善した。「足踏み状態」は26・0%、「やや後退」は6・5%と、それぞれ前回調査の43・5%、14・5%から一気に減った。
景気が以前に比べて上向いていると感じる経営者が増えた背景には、新型コロナの感染症法上の位置付けが、季節性インフルエンザと同じ「5類」に移ったことがある。国内でも、コロナ禍前に近い状況で生産・営業活動などに取り組めるようになり、半導体や部品の供給制約が緩和された状況も前向きに捉えられていそうだ。
この先の景気に関しても緩やかな拡大が見込まれている。足元を起点に23年下期、24年上期と、時期を追うごとに景気が上向くと予想する経営者は増えている。
ただ、景気拡大の原動力の一つである企業業績の伸びに水を差しかねないリスクもある。中でもエネルギー価格、為替、米国経済、素材価格、中国経済の動向などについて注視が必要だ。
ロシアのウクライナ侵攻や円安に伴うエネルギー・素材価格の高止まり、さらに食料などの物価上昇は、これまでに比べて大きな改善が見られない。また企業の人手不足も成長の足かせになっている。
乱高下する為替相場をはじめ、金融引き締めによる米国景気の後退リスク、ゼロコロナ政策緩和の効果が見えにくい中国経済、そして米中両国が貿易や投資などをめぐって対立を深めている状況なども影響が懸念される。
設備投資計画については、大手企業と中堅・中小企業の間に温度差がある。ともに景気の拡大基調を見込んでいるものの、大手は前向きな姿勢が目立つ一方、中堅・中小は動向を見極めようとする慎重な姿が見て取れる。
23年度の国内設備投資を22年度に比べて「増やす」と回答した大手経営者は53・0%と、前回調査の16・0%から大幅に伸びた。これに対し、中堅・中小経営者は33・0%と、前回調査の34・0%とほぼ変わらない。
こうした中、政府への要望として、大手企業から「経済成長を促す規制改革、行政のデジタル化、技術人材確保のための環境づくり」(キヤノンの御手洗冨士夫会長兼社長)、「景気の活性化政策、過度な円安の抑制策、安定的な原燃料調達に向けた支援」(王子ホールディングスの磯野裕之社長)を求める声が寄せられた。
他方、中堅・中小企業経営者からは「各種コスト上昇の企業負担軽減のため、価格転嫁の動きを後押ししてほしい」(日本伸管の細沼直泰社長)、「労働市場の一層の流動化」(東邦電子の河本悟社長)といった要望があった。
【景気定点観測調査】
日刊工業新聞社が2023年6月から7月にかけて、全国の大手企業、中堅・中小企業経営者それぞれ100人を対象にアンケート方式で実施、回答を得た。次回の公表は24年1月を予定。