「第三のビール」低調…酒税改正で変化するビール市場
ビール大手4社が発表した2023年上期(1―6月)のビール類(ビール、発泡酒、第三のビール)の合計販売数量は、前年同期比1%減と2年ぶりにマイナスとなった。新型コロナウイルス感染症の「5類」移行で外食中心に業務用(瓶・樽)が堅調な一方で、家庭用は低調になっている。ただ、10月のビール類の税制改正を踏まえてビールにシフトする傾向も強まり、同カテゴリーは同6%増と1992年の統計開始から初めて2年連続のプラスとなった。(編集委員・井上雅太郎)
アサヒビールは上期の総括として「業務用が回復傾向でビールカテゴリーは伸びた」と指摘した。キリンビールも「外食や宴会などの業務用需要は継続する一方で、家庭用の量販店などでの販売は低迷している」と振り返った。またサントリーは「新商品投入効果も加わりビールカテゴリーが前年同期比35%増の大幅増だった」と強調した。
大手各社が10月に向けてビールカテゴリーの拡充を進めており、これに合わせて需要が第三のビールから流入する傾向が顕著になっている。ビールは業務用で同約30%増となったのを中心に同6%増を確保。各社の主要ブランドではキリンの「一番搾り」が同8%増、アサヒの「スーパードライ」が同4%増、サントリーの「プレミアムモルツ」が同11%増、サッポロビールの「黒ラベル」が同13%増と伸ばしている。
その半面、第三のビールは一部のプライベートブランドが発泡酒に移行した影響も加わり、同12%減と3年連続のマイナスになった。10月の税制改正で値上げとなる前に駆け込み需要の可能性はあるが、全体として減少傾向が続く。各社で存続させるブランドの絞り込みが進むとみられる。
先行きの見通しについて、アサヒは「前年は行動制限がなくなっていたため、今後の大きな伸びは見込んでいない」とみる。キリンは「物価上昇もあり、節約志向と付加価値消費という二極化が進むだろう」と分析する。
また、6月単月のビール類の販売数量は前年同月比4%減と2カ月ぶりのマイナスとなった。内訳はビールが前年同月並みながら6カ月連続のプラスを維持。発泡酒は同17%増と4カ月連続プラスで、第三のビールは同16%減と9カ月連続のマイナスだった。