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チタン合金の弾力性を制御する技術、大阪公立大などが開発した意義

大阪公立大学の多根正和教授らは、医療や航空機の材料に使われるチタン合金の弾力性を制御する手法を開発した。合金の結晶内部でナノレベル(ナノは10億分の1)の小さな変化が生じると、合金が硬くなる現象に着目。結晶に微量の酸素を加えることで、合金中の結晶構造の変化を抑え材料の弾力性を保てることが分かった。骨折時に骨を固定する部材など弾力性が求められる医療用材料への応用が期待される。

東京大学物質・材料研究機構との共同研究成果。

チタン―バナジウム合金に2%の酸素を添加した合金を作製し、変形のしにくさを示す「弾性率」を測定した。酸素が結晶に入ることで、5日後の弾性率の増加率を何も加えない場合に比べると3分の1となる2%に抑えた。

チタン合金の結晶内でチタン原子が多い場所には「六方晶」と呼ばれる別の結晶構造が発生しやすく、合金内で六方晶の構造が増えると、合金全体の弾性率が上がることが知られている。

研究グループは、合金の弾性率の上昇を抑えられた原因を分析した。添加した酸素原子がチタン原子と結合することで、六方晶に構造変化するために必要なエネルギーが増加。結晶内に六方晶の構造が作られにくくなり、合金の弾性率が上昇するのを防いでいることが分かった。

チタン合金は軽くて強いため、航空機の材料に使われている。この材料特性と生体アレルギーの出にくさなどから、骨折用プレートなどのインプラント材料への利用が期待されている。

一方、人の骨の弾性率は30ギガパスカル(ギガは10億)程度で、医療用材料として知られるチタン―アルミニウム―バナジウム合金の弾性率は110ギガパスカル。弾性率が高い材料を骨折部位の固定に使うと修復が遅くなる場合があり、近年では弾性率が低い合金材料が開発されている。

だが材料を室温下に置くと弾性率が上がることが問題となっていた。

日刊工業新聞 2023年07月07日

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