杭打ち施工品質安定化、大林組が完成させたAI活用独自技術の全容
大林組は建設現場で打ち込む「場所打ちコンクリート杭」を対象に、人工知能(AI)の活用によって施工品質を安定化させる独自技術を完成した。掘削時に中間層・支持層の土質や地盤の固さをリアルタイムで推定する仕組みで、土質のみを目視で確認する従来手法の課題を解消する。技術研究所地盤技術研究部の粕谷悠紀主任研究員は「国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)に登録し、広く展開していきたい」とする。
大林組は杭打ち工事に用いる全周回転式掘削機から回転トルクや押し込み力、掘削時の深度などのデータを出力。ここに設計土質や経過時間といった独自の指標を加え、AIで土質や地盤の固さを推定する「PiRuler―GEO」を完成した。さらに掘削後に土質を目視で確認する従来の手法も併用することで、支持層にコンクリート杭が到達したかどうかを高精度で判断する体制を整えた。
AIによる機械学習にあたっては、大林組や国交省が持つ公共工事27現場873本の杭データを教師データとして利用。掘削時にはAIが15秒ごとに土質と地盤の固さを推定し、作業員の判断を支援する。掘削深度や支持層への到達状況などはタブレット端末でも確認できるため、オペレーター室にいない作業員ともスムーズな情報共有が可能になるという。
特に効果を発揮するとみられるのが、支持層が傾斜している場合だ。「掘削作業と並行して、地盤の土質や固さを確認できる。傾斜していることを早期に把握することで、杭が支持層に届かない現象を解消できる」(粕谷主任研究員)という。これにより、手戻り工事を低減。結果として施工品質を高めるだけでなく、建設コストの増加や工期遅延を防ぐ効果も期待できる。
主に土木工事で採用されるオールケーシング工法で、場所打ち杭の中間層や支持層の確認に使うことを想定する。建設現場には制御盤とパソコン、配線を持ち込むだけで、大半の掘削機で利用できるという。アースドリル工法での中間層の確認や、鋼管矢板基礎の掘削時に中間層や支持層を確認する用途も見込む。近く土木現場に実際に導入する予定だ。
大林組はこのほど開発したGEOと計画時のシミュレーションシステム、さらにアースドリル工法などで安定液の性状を評価するシステムや施工記録のデータベースとともに、場所打ち杭の品質管理システム「PiRuler」として運用する。建設機械のレンタル会社を通じた外部へのレンタルも計画している。(堀田創平)