ダイハツ系が開発、「永久磁石」不要の電動車モーターがすごい
メタルアートはYamada Power Unit(兵庫県姫路市、山田知徳社長)と共同で、電動車用に永久磁石が不要な同期リラクタンスモーター(SynRM)を開発した。現状の電動車の永久磁石同期モーター(PMSM)はレアアース(希土類)を磁石原料とし、高騰が障害となる。実用化の時期は未定だが、低コストで効率良く製造できるSynRMを目指す。
メタルアートは飛行ロボット(ドローン)や電動車の動力装置を手がけるベンチャー、Yamada Power Unitと協業し、SynRMを先行開発する。
SynRMは固定子の磁力と、モーター回転部分の鉄心の磁気抵抗の差から生じる磁極との相互作用で、トルク(回転力)を生み出す。鉄心と銅のみからなるため、安価で高効率に作れる。これまで最適設計技術で十数万パターンの形状シミュレーション(模擬実験)を実施し、SynRMを高出力・高効率化した。
独自の巻線方式による小型化や銅使用量約10%削減も可能とした。電動4輪駆動の後輪駆動用モーターとして実車で評価試験した結果、従来の誘導モーター並みに低騒音・低振動で、4輪駆動の高い走行性能も確かめた。
PMSMは永久磁石の磁束が電費・燃費低下の原因となる。そのほか誘導モーターも永久磁石を使わず同低下を抑えられるが、低効率で大型のため広い車載空間が必要となる。
SynRMの量産に向け小型化・原価低減し、電動4輪駆動用から実用化を目指す。電気自動車(EV)の駆動装置には大手がすでに多く参入し、競争が激化している。そこでニッチ(すき間)市場となる4輪駆動の後輪側の小型用に的を絞る。
メタルアートはダイハツ工業系で、売上高の約80%をエンジン・変速機の部品製造に依存する。2022年には就業機会の多様化と地域貢献を目的に農業ビジネスにも進出した。電動化など自動車業界の大変革や働き方改革を受け、持続可能な事業構造へ転換を進める。
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