「eアクスル」技術競争激化…アイシンはエネ損失半減のモーター開発
アイシンが電動駆動装置「eアクスル」の技術競争力を高めている。既存製品に比べ大きさを半分にした「第3世代」の投入を2027年に計画するなどこれまで小型化が注目されていたが、eアクスルを構成する要素部品を見直し高効率化も並行して進める。その一環で、資本参加する東北マグネットインスティテュート(TMI、宮城県名取市)の磁性材料を活用し、エネルギーロスを半減したeアクスル向けモーターを開発した。29年までの市場投入を目指す。(名古屋・川口拓洋)
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eアクスルの高効率化に向けては、モーターの銅線の巻き方を工夫する方法や電磁鋼板を薄くするなど、さまざまな手法が研究されている。アイシンは東北大学発ベンチャーのTMIの磁性材料「ナノメット」をモーターのステーター(固定子)に採用することで高効率化を実現した。アイシンEV推進センターモータ開発室の恵良拓真グループ長は「モーターは技術革新が進み、劇的に効率を高めることは難しいが、材料を変更することで大きな改善が見込める」と期待する。
ナノメットは磁場の力が強い「高飽和磁束密度」と、材料自体の抵抗が低い「超低鉄損」を両立する素材。一般的にeアクスル向けモーターの材料として使用される電磁鋼板と比べると、同じ大きさでも材料自体の抵抗を軽減できる。
一方でナノメットには薄く、もろい性質もある。アイシンは自動車部品の開発や製造で培ったノウハウを活用し、厚さ約25マイクロメートル(マイクロは100万分の1)のナノメットを数千枚重ねて固めるなどして、eアクスル向けモーターの材料に仕立てた。恵良グループ長は「eアクスルにとって高効率化は至上命題。モーターだけで車のエネルギーを大きく下げられる」と展望を語る。同モーターは24―26日にパシフィコ横浜(横浜市西区)で開かれる「人とくるまのテクノロジー展2023」(自動車技術会主催)に出展。今後、量産に向けた検討や研究開発を重ねる。
電気自動車(EV)で主な動力源となるeアクスルは、独ボッシュやニデックなど競合他社も大型投資を進めており、競争が激化している領域。アイシンの吉田守孝社長は「電動化を最重点課題とし、eアクスルを重要製品に掲げている」と方針を示している。24年3月期は電動ユニットの販売台数を前期比100万台増の236万台と見据える。eアクスルの質と量をめぐる各社の開発・生産競争はますます熱を帯びそうだ。
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