老朽マンションの建て替えは進むか…不明所有者は決議から除外へ
政府は老朽化した分譲マンションを円滑に建て替えられるよう、区分所有が不明の所有者を決議の母数から除外するなどの法改正を進める。2024年の通常国会に区分所有法等の改正案を提出する方針だ。さらに関連する法律や制度の見直しを進め、適切な管理や改修で老朽マンションのスラム化を防ぎ、建物の建て替えにも居住している所有者の意向が正しく反映できるようにする。(編集委員・板崎英士)
マンションの建て替えなどを行うには区分所有者による決議が必要。現在の区分所有法では建て替えには全区分所有者の5分の4、エレベーターの設置など共用部分の変更には4分の3の賛成が必要になる。だが決議の際に誰が区分所有しているかわからず決議に参加しない場合は反対者として扱われる。このため不明の区分所有者が多いほど決議に必要な賛成数を得るのが困難になっている。
建物・敷地の一括売却は民法で所有者全員の賛成が必要だ。20年のマンションの建替円滑化法の改正で、耐震性が不十分だったり外壁が落ちて危険な場合には特例として5分の4の賛成で可能になった。それでも不明区分所有者が多いほどハードルは高くなる。
法相の諮問機関である法制審議会は8日に区分所有法見直しの中間試案を取りまとめた。所有者不明の区分所有建物に特化した財産管理制度の創設や、不明区分所有者を決議の母数から除外する仕組みの創設、建て替え要件の5分の4からの引き下げ、多数決による売却・取り壊しなどの新たな再生手法の創設などを盛り込んだ。さらに「被災した建物は復旧、復興の観点からも一般の建物より引き下げが適当では」(法制審部会長の佐久間毅同志社大学大学院教授)と、被災マンションは3分の2で建て替えや一括売却を可能にする。今後パブリックコメントを実施する。
国土交通省の調べによると21年末に築40年超のマンションは115万戸だったが、10年後に2・2倍の249万戸、20年後には約3・7倍の425万戸となると見る。1981年5月以前の旧耐震基準で設計したマンションは震度5強までしか対応しておらず、こうしたマンションの耐震対策は喫緊の課題。ただ古いマンションほど区分所有者の高齢化も進み、建物老朽化とともに管理組合の担い手不足も深刻。こうした状況を少しでも改善できるように法改正する。