物流「2024年問題」の根本課題…トラック運賃改善求む
トラックドライバーの労働時間規制に伴い生じる「物流の2024年問題」は、効率化などの技術的なアプローチだけでは解決できない。担い手の確保が大前提だが、その原資となる運賃の改善は道半ばだ。トラック運送事業者の大半が所属する全日本トラック協会(東京都新宿区)は、「標準的な運賃」への理解や商慣行の見直しが不可欠だと訴える。(梶原洵子)
人材確保は24年問題以前からの運送業界の課題だ。労働条件の改善には長時間労働の削減が必要だが、長時間労働でドライバーの給与水準を維持するいびつな構造がある。24年問題を受け、急いで労働条件を改善する必要に迫られ、持続的に運送を行うための参考水準として国土交通省が20年に告示したのが「標準的な運賃」だ。
だが、コロナ禍で荷主の業績が悪化し、運賃是正はまだ途上。国交省が2―3月に実施した調査では、運賃交渉を行った運送業者は69%。「荷主との関係で言い出せない事業者もいる」(全日本トラック協会)。交渉した事業者のうち希望額が通ったのは30%、一部収受できたのは33%。全体の76%が、24年3月までの時限措置である標準的な運賃制度の延長を希望している。
労働時間が減って給料が下がり、人材が他業界に流れれば輸送力は低下する。「若い人や女性も入ってくれる業界にならなければ本当の意味で24年問題は解決しない」(同)。業務効率化の投資にも収益確保が必要だ。
商慣行の中で特に見直しを急がなければならないのは、荷積み・積み降ろし作業(荷役)や荷役の順番を待つ荷待ち時間の削減だ。国交省の調査によると、1運行当たり平均で約3時間かかっており、この時間を削減できれば本来の運送業務に充てる時間を増やせる。国交省は2日に公表した24年問題対策のガイドラインで、荷主に対して荷役・荷待ちを1時間以上短縮するように求めている。
荷役や荷待ち時間が長い要因には、トラック到着時間帯の集中や、荷物集中日の発生、手作業による長時間の荷役、トラックの受け入れ効率の悪い倉庫のレイアウトなどさまざま。「ひどい場合、トラックが出発する2―3時間前に荷物量を連絡する荷主もいる」(同)。運送業者だけでなく、荷主も新たな技術を取り入れるなどで、一緒に変わる必要がある。
消費者も同様だ。政府がまとめた24年問題に対する政策パッケージには「送料無料」表示の見直しに取り組むことが盛り込まれた。表示通り輸送コストがゼロと思う人は少ないだろうが、運送業が軽く見られる要因にはなる。「送料込み1万円」と「価格は1万円で送料無料」とでは印象が違う。「以前から事業者や労組から問題視する声があった」(同)。全ト協は今後ウェブ広告などを通じ消費者への意識改革も呼びかける。
また、運送業界自身は多重下請構造などの課題を抱える。24年問題の解決に向けて安定した輸送力を維持するには、荷主や消費者の理解を深めながら、ドライバーにとって魅力的な業界となるための変革が求められる。