学長・理事が教員に復職、電通大が定年前退任で新制度の狙い
電気通信大学は学長と理事が任期終了時に、65歳の定年前なら以前の所属部局の教員に戻ることができるよう規則を整備した。国立大学では教授などから役員に就任する場合、利益相反を避けるために教員を辞任するのが一般的だ。教員に戻るには新たな採用手続きが必要だが、認められないケースが近年相次いでいる。40、50代の教員の役員就任を後押しする制度として、他大学でも参考になりそうだ。
電気通信大は学内教職員が学長・理事になり、定年前に離任した場合に、元の職位に戻れる規定を新設した。教員は役員就任前と同様に研究室での学生指導や研究活動ができる。教員復帰後の給与や退職金には役員での在籍年数などを折り込み、不利益がないようにする。
通常、教員が国立大学長に就く場合は辞職願を出す必要がある。理事でも同様の大学が多い。執行部の予算・人事権と現場の教員の利益がぶつかるためだ。研究室を閉じ、そのまま研究者としてのキャリアを終える可能性が高くなる。そのため「教員のまま就く副学長なら良いが、理事にはなりたくない」という声が挙がりがちだ。特に定年間近ではない若い教員は躊躇(ちゅうちょ)するケースが少なくない。
役員が任期終了時に定年前の年齢で、元の学部などに戻る希望がある場合は通常の採用と同様の手続きが必要だ。役員として対立した教授会や新学長らがこれを認めず、元国立大学長が大学を去るケースが散見されていた。
こうした規則整備は国立大で初めてと見られる。田野俊一学長は「中堅の教員が理事になり、政策理解やネットワーク構築で力を付けた上で学長になれば、優れた大学改革が進む。研究の道を残しておくことで、それを後押しできる」としている。
日刊工業新聞 2023年06月09日
