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若手研究者比率3割へ、電通大・新人事制度は博士課程への進学者増につながるか

電気通信大学は若手研究者の内部育成と外部採用の双方からなる新人事制度を始めた。学内の博士後期課程修了者の最初の職として「任期付き助教」を新設し、将来は常時、約40人とする仕組みにした。一方で公募の職位を従来の助教から「テニュアトラック准教授」に引き上げ、さらに優秀な人材を迎える。10年後に40歳未満などの若手研究者比率3割を実現する方針だ。

電通大の若手の採用はこれまで、試用期間を経て定年雇用に変わる「テニュアトラック助教」に偏っていた。人気が高く全国から集まる一方、学内の博士学生の支援と離れている問題があった。

新制度ではまず学内の博士修了生を主対象に、5年任期の助教に採用する道筋を付けた。研究室の変更と、2人以上のメンター(助言者)指導により、専門の幅を広げつつ独り立ちする段階の育成を強化する。任期終了後は学外転出で、腕を磨いてもらう。

一方、35歳以下を対象とするテニュアトラック准教授は、業績の高い人材を確保するのに力を発揮する。5年任期の審査後に定年雇用となるほか、期間短縮や教授昇格も可能だ。合わせて教授は学内昇任が大半だったが、公募や招聘(しょうへい)を取り入れて多様化する。

電通大の博士後期課程学生の定員は1学年59人。情報理工系人材の社会的ニーズが高く、国費留学生や社会人も多いことから、他大学と異なり定員を超えて増加している。また文部科学省が始めた「次世代研究者挑戦的研究プログラム」では、1学年8人の枠を獲得した。

対象学生の3割が支援を受ける計算で、影響が大きい。博士教育と若手研究者の育成を連動させながら、強化していく形が進みそうだ。 

日刊工業新聞2022年1月27日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
博士後期課程修了者向けの教員ポストを、学内で新たにいくつも用意することは、難しいものだと思っていた。が、シニアの定年退職人数が各年、見えていることを踏まえて、シニアより人件費の安い若手ならより数を増やして雇用でき、プラン策定はそれなりにできるわけだ。電通大ではこれまで30歳前後の人材が手薄だったが、これを新設の「任期付き助教」で将来は常時、約40人に持って行くというから大きい。研究型大学であれば博士研究員(ポスドク)が占めるところを、より落ち着いた教員職なのも魅力だ。このキャリアルートを示すことで、民間企業への就職に引っ張られがちな情報理工系でも、博士課程への進学者増が期待できるのではないか。

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