「中小含め多くの企業に宇宙分野へ参画してほしい」宇宙飛行士・若田光一氏インタビュー
宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙飛行士の若田光一さんは30日、日刊工業新聞社の取材に応じた。世界中で月面探査に向けた動きが活発化する中、日本も技術開発や宇宙飛行士の新規採用に取り組んできた。今後、日本はどのような形で宇宙開発に貢献すべきだろうか。宇宙での長期滞在の経験を踏まえて話を聞いた。
―日本が持つ技術で、宇宙開発に生かせるものは何か。
「宇宙で使う蓄電池などをはじめとして、国際宇宙ステーション(ISS)のコア技術は日本の企業が支えている。今回、ISSで実験した水再生技術なども日本の技術で、有人探査には不可欠だ。さらに月や火星などには重力があり、建築技術などは微重力のISSよりも地球上の技術を生かせる可能性は高い。人類が宇宙で生活できるようになるための技術は10年ほどで飛躍的に向上するとみる」
―日本の宇宙開発を加速するには。
「中小企業を含めて多くの企業に宇宙分野へ参画してほしい。非宇宙企業でも活躍できる場所はあり、技術の拡大は信頼性向上にもつながる。日本人宇宙飛行士が月面に立つためにも、日本のモノづくりを強みに貢献していきたい」
―高等専門学校でも宇宙開発に取り組んでいます。
「企業の現場で即戦力として働ける教育は科学技術の発展に重要だと感じる。さまざまな分野に適応できる人材であり、宇宙開発での活躍も期待している。就職を考える時には宇宙に携わる仕事も候補に入れてほしい」
―今後の目標は。
「生涯現役で有人宇宙活動の現場で仕事がしたい。これまでの経験を生かして、日本人宇宙飛行士の有人探査や地球低軌道の利用促進に携わりたい。機会があれば、今後も有人飛行に挑戦したい」
【記者の目/日本が先導できる体制を】
宇宙分野で活躍する非宇宙系企業は増えたが、まだ多いとは言えない。宇宙で長期滞在を経験し、企業で技術者として働いていた若田さんは宇宙に適した技術の目利きができる。その力を生かして今の宇宙に必要な技術は何かを示し、日本が先導して開発に挑める体制を作ってほしい。(飯田真美子)