パソコン需要の減速鮮明、それでもメーカーは悲観していない理由
国内のパソコン(PC)需要の減速が鮮明になっている。学校教育をデジタル化する政府の「GIGAスクール構想」や、コロナ禍での在宅勤務の増加に伴って発生した特需の反動減が出たとみられる。ただPCメーカー各社は、テレワークとオフィスへの出社を組み合わせた「ハイブリッドワーク」が今後も続くとみており、PC周辺機器を含めて攻勢をかける。柔軟な働き方の定着をどれだけ後押しできるか試される。(阿部未沙子)
電子情報技術産業協会(JEITA)がまとめた2022年の国内PC出荷台数は、前年比22・6%減の686万9000台となった。新型コロナウイルス感染症が流行し始めた20年は同7・4%増の1045万5000台を記録したものの、21年からは前年割れが続く。
だがPCメーカー各社は、必ずしもこうした状況を悲観していない。日本HP(東京都港区)の岡戸伸樹社長は「ハイブリッドワーク(の普及)などの市場の変化を、新しいチャンスが生まれる機会と前向きに捉えた」と話す。
22年には米HPが、ビデオ会議用の端末などを扱うPoly(ポリー、カリフォルニア州)を買収し、製品群を強化。同年、日本HPはハイブリッドワークを支援する製品を発表し、被写体を追従するカメラといった周辺機器を含めて提供するとした。
また、ビデオ会議での音質や画質の悪さなどを解消する機能も追加。パーソナルシステムズ事業本部の小島宏クライアントビジネス本部長は、ビジネスパーソンの働き方について「コロナ前に戻ることはないだろう」と認識。その上で「23年はハイブリッドワークが定着する年になる」と推測する。
富士通クライアントコンピューティング(FCCL、川崎市幸区)の大隈健史社長は「PCが一台あればいつでも、どこでも仕事ができる環境になってきた」と語り、コロナ禍での変化を踏まえた幅広い品ぞろえを訴求する。同社のノート型PCの強みは、持ち運びのしやすさや軽さだ。製品企画部門の松本景子氏は「世界最軽量を実現するというエンジニアの目標がある」と強調する。
例えば3月中旬に発売予定の「UH―X/H1」は、重量が約689グラム。従来品「UH―X/G2」と比べると約55グラム重いものの、画面サイズを17%拡大した。
さらに、若い世代を主なターゲットとする製品「CHシリーズ」も展開。大学生の意見を聞きながら企画をしたという。人工知能(AI)を用いて肌質や顔色の補正ができるアプリケーション「ユーモア」も搭載。友人などとオンラインで対話する前に使ってもらうことを想定する。
ほかにも、日本エイサー(東京都新宿区)は1月、国内で同社として初めて会議用スピーカーを発売した。PCメーカー各社は自社の強みや個性を生かした製品の展開により、顧客の業務の円滑化をどれだけ後押しできるかが問われ続ける。